基本の基~スターボ!と下!~続き
前回の続きです。
復習かねて、クイズと回答を再掲します。
以下A~K、自分が艇団の中盤でマークラウンディングしている中でのケースをイメージして考えてみてください。
※マークは上・サイド・下マークが風位に対して適正に設置されている。
※風速8~10knot/s程度で、大きな波やうねりは無し、全てゾーン外。
※ケースではお互いに避けられるルームがある。
※マークラウンディングはアンクロック。
A スターボードのクロースホールドでポートのレイライン方向に帆走中、上マークを回航した先頭艇がポートで下りてきてミートしそう!
規則10 反対タックで航路権がある・・・避けない
B 上マークに向けて帆走中、ポートにタックしたところ、上マークを回航した艇団がポートで下りてきてミートしそう!
規則11 同一タックで航路権がある・・・避けない
C スターボードレイラインでトラブって止まっているスターボード艇の後方を通過してタックし、風上側にオーバーラップしたところでトラブルを解消した艇が帆走を始めた。マークは10度下側にあるが、風下側艇はクロースホールドで帆走を始めた。
規則11 同一タックで航路権がない・・・避ける
D 上マークを回航したら、目の前から上マークにアプローチするポート艇がきた。
規則11 反対タックで航路権がある・・・避けない
E 上マークからサイドマークへ激しく上り合いして帆走していたところ、前を帆走する艇に追いついたので、風下側の手を伸ばせば届く位置にオーバーラップしたところ、風上艇がかなり風下側にあるマークに向けて、角度を落としてきた。
規則17 避ける
F サイドマーク回航後、上り目で帆走中、後ろから追いついた艇が風上側にオーバーラップし、マークに向けて角度を落としてきた。
規則11 同一タックで航路権がある・・・避けない
G 下マーク回航時、先に前で回航していた艇がトラブルでそのまま止まっていた。
規則12 同一タックで航路権がない・・・避ける
H 下マーク回航後、即タックしたら下マークに向かってくるスターボード艇がいた。
規則11 同一タックで航路権がある・・・避けない
I 上マークを回航後、ジャイブしたところ、目の前を上マークにアプローチするスターボード艇がいた。
規則11 同一タックで航路権がない・・・避ける
J 下マークに向かってポートで帆走中、同じくダウンウィンドを帆走中のスターボード艇が左舷から近付いてきた。
規則10 反対タックで航路権がない・・・避ける
K 下マークに向かってポートで帆走中、接近してきたそのスターボード艇をさけるためにジャイブしたところ、目の前にポート艇がいた。追いついてしまいそうだ。
規則10 反対タックで航路権がある・・・避けない
Eがひっかけ問題でした!
規則11で避けなくて良い。と思いきや、規則17で避けなければならないケースです。
17 同一タックでのプロパーコース
クリア・アスターン艇が、同一タックの相手艇の風下に自艇の2艇身以内でオーバーラップした場合には、両艇が同一タックで2艇身以内の間隔でオーバーラップがが続いている間、その風下艇はプロパー・コースより風上を帆走してはならない。(後略)
規則17についての詳しくは、次回以降にして、まずは、基本の基を叩き込みましょう。
基本の基は、単純だし、明確だけれど、レース中では突然窮地に陥ることもあります。
何故なら、ケースは実際には1対1で起こらないことが多いからです。
例えばBのケースで、ビッグフリートでのレース中だったらと考えてみると、どうでしょうか。
上マークに向けて帆走中、ポートにタックしたところ、上マークを先に回航した艇団が下りてきた!ポート艇もスターボード艇もいる!
ポート艇は避けなくてもいいが、スターボード艇は避けなければならない。
真っ直ぐ帆走できない、ブランケットで帆走スピードが落ちる、波も悪くなっていく、挙句の果てにはレイラインにスターボード艇がずらり。
・・・あー、もうイヤ・・・。
になりかねません。
では、Kのケースで、状況を変化させて次のように考えてみると、どうでしょうか。
風速18kont/s、自艇(ポート)はダウンウィンドレグをかなり落とし目、でもマークには入れる角度で下マークへアプローチ中、
左後ろにいたスターボード艇団が、ブローに乗って追いついてきた。
自分の風下側にもポート艇団が迫っていて、避けるためのルームを与えられそうになくてジャイブ出来ない。
さらに風速が上がり、ガンガンと風上側からスターボードのコールがかかる。風下側のポート艇だけでなく、さらに下側からは上ってくるポート艇団も見えている。海面は白波も立って、マークが近づいてくる・・・。
という状況を想像すると、かなり恐怖ですよね。
フリートの中盤あたりで、このような状況に自艇をおかないタクティクスが重要ということでもあります。
周囲をよくみておく。前だけでなく、後ろの状況にも注意を払い、自艇がこの先どうなるかを想定する。
チームで分担して複眼を使ってタクティカルなレースの組み立てが出来ると順位が上がっていきます。
(上がりきれば、常にトップ回航で自由自在にセーリングが出来ます!)
このように、ケースが起こるシーンは、前後に複数の艇が絡んでいることがほとんどです。ケースを起こした場合は、相手艇のことだけでなく、周りの艇の状況も客観的に把握出来ていると、審問での証言の妥当性が高まります。ケースを起こしたりプロテストをされると、パニックになったり、目の前の処理で慌ててしまうこともあるかと思いますが、あとから振り返ることが出来るようにしておけるとよいです。私は大事なレースでは、ケースを起こした場合にすぐに状況のメモを取れるように、デッキに書くスペースと濡れても書けるマジックを準備をしています。冷静にもなれるので、とても有効です。