基本の基~スターボ!と下!~続き②
基本の基のA節航路権には、もう少し続きがあります。
13 タッキング中
艇は、風位を超えた後クロースホールドのコースになるまでは、他艇を避けていなければならない。この間、規則10、11および12は適用されない。2艇が同時にこの規則に従わなければならない場合には、ポート側にいる艇、または後方にいる艇が、避けていなければならない。
スターボードからポートにタックする時は、風位までが航路権艇なのはわかると思いますが、ポートからスターボードにタックする時は、風位を超えればタック自体はスターボードに変わりますが、クロースホールドのコースになるまでは、非航路権艇だということです。ポートからスターボードにタックしても、クロースホールドになるまでは航路権は得ていないということです。
さて、第2章にはA節~D節まであり、A節が航路権について規則10~13に記載されていて、紹介してきましたが、B節も「基本の基」です!
第2章 艇が出会った場合
B節 一般制限
A節とB節は共存しています。
A節は航路権の原則的の節ですが、B節は航路権の備考的な節です。
そもそも「スターボ!」も「下!」も航路権の主張ですが、注意すべき規則があります。
15 航路権の取得
艇が航路権を取得する場合、相手艇に対し、初めに避けているためのルームを与えなければならない。ただし、相手艇の行動により航路権を取得する場合を除く。
16 コース変更
16.1 航路権艇がコースを変更する場合、相手艇に対して避けているためのルームを与えなければならない。
避けているためのルームを与えずに航路権艇になってそれを主張しても、オイオイ!ってことになりますし、航路権を持っているからといって、どんな相手にでも自分の航路のために避けさせられるわけではないですよ、ということです。
では、与えなければいけないルームって一体どのくらいなわけ?となりますね。定義を確認してみましょう。
定義 ルーム
艇がシーマンらしいやり方で速やかに操船している間に、その場の状況で必要としている余地をルームという。これには第2章の規則と規則31に基づくその艇の義務に従うための余地を含む。
結局その余地ってどのくらいなの!!??ですが、「その場の状況で必要としている」についての解釈をする必要があります。海況等の外部環境要因と、自艇・他艇の艇の能力、そして場合によっては操船技術等を鑑み、衝突しない距離がルームと理解します。
もう一度規則15について、前回紹介したKのケースを再掲しますね。
風速18kont/s、自艇(ポート)はダウンウィンドレグでかなり落とし目、でもマークに入れる角度で下マークへアプローチ中、左後ろにいたスターボード艇団が、ブローに乗って追いついてきた。自分の風下側にもポート艇団が迫っていて、避けるためのルームを与えられそうになくてジャイブ出来ない。
ここで、何で?ジャイブすればいいじゃん。と思う時、規則15が守られるかを考えます。ジャイブしてスターボードの航路権を得てすぐに、風下のポート艇に自艇を避けるためのルームを与えられるか、がポイントとなります。とはいえ、航路権艇に突っ込むことはもちろんNGなので、スターボード艇の後ろを通るか、風下艇が初めに避けられる余地をつくる程度に一度上ってからジャイブするか、風下艇がジャイブするタイミングで一緒にジャイブするか・・・でしょうか。もちろん、航路権艇のことは避ける必要がありますから風下艇にジャイブして!と言ってジャイブも可能ですが、この声かけには風下艇が応じなければならない訳ではないところもポイントです(もちろん、風下艇にジャイブするスペースがあって、ジャイブしようと思えば、ジャイブするのはOKです)。自分がこういうシーンで逆の立場(風下艇)の場合、風上艇がジャイブしてきて自分に相手を避けるルームがあるかと、相手艇が航路権艇(スターボード艇)を避けるために自分が与えるべきルームと、自分がしたいこと行きたい方向をよく見極めて自分が行使するルールを考えます。
それからちなみに、ルームの定義に出てきた規則31は以下です。
31 マークとの接触
レース中、艇は、次のいずれかのマークと接触してはならない。
・スタート前のスタート・マーク
・帆走中のコースのレグの起点、境界または終点となるマーク
・フィニッシュした後のフィニッシュ・マーク
気になるマーク周りの話にそろそろ移りたいのですが、基本の基をもう少しかな・・・