Destino-sailing

セーリング競技規則やレース運営を中心に、セーリングライフについて書いています。

レースの帆走>①スタート

前回記載の通り、RRSでは

レースの帆走=スタート+コースの帆走+フィニッシュ

と整理されています。

「大会への参加」はまた違うカテゴリーになりますが、レースの帆走については、第3章にまとまっています。

 

レース運営に携わる際、この部分は基本的かつ重要なレース構成要素ですので、初めて/久しぶりにレース運営する方は特に、よくRRSを読んで心の準備・イメトレをして運営に臨みましょう。

ということで、今回からしばらくは主に運営向けの内容になりそうです。(もちろん、初めて/久ぶりレースに出る選手の参考にもなれば嬉しいです。)

 

まずはスタートの定義から。今回のルール改正での変更点がありますので、確認してください。

 

スタート スタート信号時またはスタート信号後、艇体がスタート・ラインのプレスタート・サイドに完全に入っていて、(中略)、艇体の一部がスタート・ラインをプレスタート・サイドからコース・サイドに向かって横切るとき、艇はスタートするという。

 

今回のルール改正でフィニッシュの定義と共に変更された箇所があります。今まではスタート/フィニッシュラインを切るのは「艇体、乗員、装備の一部」の横切ることだったのが、「艇体(Hull)」に統一されたこです。複数艇種が参加するレース等で、艇種によって基準が変わらないようにするために判定基準が変更になったのですが、「艇体(Hull)」ってどこ・・・という疑問もわきそうですね。現時点では、一応固定されたもの(固定されたウィング等)は艇体に含まれ、ブーム・セール・バウスプリット等動くものは「艇体(Hull)」ではない。という見解が出ています。

 

また、特に運営上のもう一つ重要な変更点として、今までは、本部船/フィニッシュボートにオレンジ旗/青色旗を掲揚していても、それは必ずしもマストに掲揚していない場合もあり、かつスタート/フィニッシュのラインはマストから見る。ということもあったかもしれません。

今回の改正でオレンジ旗/青色旗を揚げたポールがスタート/フィニッシュラインのエンドになることが明確化されましたので、ご注意ください。

 

オレンジ旗(音響信号無し)

この旗を掲げたポールは、スタート・ラインの一端である。

青色旗(音響信号無し)

この旗を掲げたポールは、フィニッシュ・ラインの一端である。

 

レース信号旗についてはRRS「レース信号旗」の一覧に載っています。

各旗について掲揚・降下時の音響信号が必要な場合もあり、

それについても一覧に記載がありますので、音響信号担当になったら、よく確認して信号旗の上げ下げをしましょう。

 

さて、スタートの話に戻ります。「スタート時」よく言う「スタートシークエンス」はいつからいつまででしょうか。レース中の定義を確認します。

 

レース中 艇がその準備信号から、フィニッシュしてフィニッシュ・ラインを離れるまで(中略)、その艇はレース中であるという。

 

ということで、「スタートシークエンス」は準備信号の4分前~スタートです。

予告信号~準備信号までは「レース中」ではありません。従って、レース中に適用される各種の規則は、準備信号以降に適用されます。

 

26 レースのスタート

レースは、次の信号を用いてスタートさせなければならない。計時は視覚信号から行わなければならない。音響信号の不発は無視されなければならない。

 

スタート信号旗を担当する場合、秒針が動くがごとく、旗の上げ下げをしましょう。

視覚信号のタイミングが曖昧だと、公正なレース運営と言えなくなってしまうので、要注意です。

 

スタートまでの時間は言わずもがなですが、一応。

5分(またはレース公示もしくは帆走指示書に記載の通り)=クラス旗掲揚=予告信号

4分=準備旗(P/I/Z/I+Z/U/黒色)掲揚=準備信号

1分=準備旗降下=1

0分=クラス旗降下=スタート信号

 

音響信号は「1声」です。1分前の音響信号は「長音1声」です。

1分前だけ、「ぷあ~~~」と鳴らさなければならないのですね。

しかし、海外のレースでは、音響信号がガンの場合もあります。記憶にないですが、スタート信号だけがガンだったのかもしれません。SIかブリーフィングで説明があったような気もしますが、いずれにしても視覚信号が重要ということですかね。

 

それから、以下にも注意しましょう。

規則27 スタート信号前におけるレース委員会のその他の行動 参照)

・帆走するコースの信号は予告信号前に発する。(別の方法による指示でもよい)

 &予告信号以前であれば、別のコースの信号に変えることが出来る。

 →選手は、予告信号時に示されているコースを確認すること。

・ライフジャケット着用を求める信号を発する場合は、予告信号以前に。(音響1声+Y旗掲揚)

・準備信号以前であれば、スタート・マークを移動することが出来る。

 →選手は、準備信号以前にスタートラインを確認した場合、その後に動かされていないかを確認すること。

・スタート信号前にレースを延期・または中止することが出来る。

 例)風向が大きく変わってしまったり、レースエリアに操業中の漁船が入ってきてしまったり・・・。 

 →延期・中止のやり方は以下です。

  延期:音響2声+回答旗(スタートを延期し、回答旗降下1分後に次の予告信号を発する)

     音響2声+H旗の上に回答旗(これ以降の信号は陸上で発する)

     音響2声+A旗の上に回答旗(本日はこれ以上レースを行わない)

  中止:音響3声+H旗の上にN旗(これ以降の信号は陸上で発する)

     音響3声+A旗の上にN旗(本日はこれ以上レースを行わない)

 

回答旗=APAnswering Pennant延期)を揚げる時は2声、NNoRace中止)旗を揚げる時は3声。

H(とりあえずHarbour Back)旗か、A(今日はAbandanやめ)旗。

回答旗とN旗は単独でも使えますし、組み合わせは意味を考えて使います。

 

ちなみに、スタート後に、つまりコースの帆走が始まってからスタート手順の誤りでレースを中止にすることもできます。その場合、以下の規則があります。

 

32 スタート後の短縮または中止

32.1 (前略)スタート手順の誤りを理由としてレースを中止することができる。ただし、1艇でもスタートし、コースの帆走をして、レース・タイム・リミット内にフィニッシュした後は、レース委員会は、そのレースまたはシリーズにおけるすべての艇への影響を考慮することなく、レースを中止してはならない。 

 

 

スタート延期と中止の違いは、スタートペナルティーが関わる重要なポイントなので、定義があることだけ確認して、次回に続く・・・。

 

延期 延期されたレースとは、予定されたスタートの前に延期されたものをいう。ただし、その後にスタートさせる、または中止することができる。

中止 レース委員会またはプロテスト委員会が中止したレースとは、無効となるが、再レースを行うことができるものをいう。