Destino-sailing

セーリング競技規則やレース運営を中心に、セーリングライフについて書いています。

お手洗い事情on the water

今日はルールとは少し離れて、でも少しだけ関連する話です。

 

突然ですが皆さん、海上でのお手洗いはどのように済ませていますか?

私は女性で、キールボート・ディンギー・運営ボートで海上で一日過ごす経験をしていますが、お手洗い問題は、ヨットを始めた当初からの課題でした。

 

単日のレースや練習で、男性の皆さん、どのようにされていますか?

日本でしか活動していないと、海外の男性がどのような所作か?を気にしたこともないと思いますが、

海外では男性も水中や他人から見えないように船内されていると思います。

というか、日本でよく見かけるようなデッキから外へ、というのをあまり見たことがありません。

 

それから男女問わず、課題を感じる方、どのようにされていますか?

極端に摂取水分を減らして体調を崩してしまったり、また季節によって色々工夫されていることと思います。

 

とにかく、皆さん、ヨットレースは人間が開催して、人間が参加している企画ですので、

人間的生理現象は起きること前提・処理することは当然として行っていきましょう。

 

「・・・とはいえ!」なことがヨットに乗っている時の生理現象だと思います。

 

マリントイレがある艇にいれば、解決できることと仮定します。

そうでない場合、色々悩まれると思います。

 

ということで、まず私の経験(おそらくほぼ女性目線)@ディンギーレースについて記したいと思います。

 

ドライスーツの場合~マリントイレのある艇に行くか?おむつをするか?~

ドライスーツは冬に着るイメージがあるかと思いますが、寒流の影響のある海域でレースをする場合、夏でも真冬の身支度をして海に出る必要があります。

日本で、真冬に終日海上にいるようなレースに出ることは少ないかと思いますが、

カナダやイギリスで、実際に陸は半袖でも海上は夏でもドライスーツを着てディンギーレースに出た経験があります。

極寒の1日最大3~4レース。朝から一滴も飲んでなくてももよおす。そんな時、どうするの?

 

選択肢の一つは、マリントイレのある運営艇に協力していただくこと。

ただ、レースの合間のほんの数分~数十分の間に、運営ボートに意思を表明し、ボートに近づいて乗り移り、お手洗いを借りて用を済ませて自艇に戻り、レースに戻る。というのは、時間的に困難なことを経験しました。

お手洗いに間に合わないか、レースに間に合わないかの二択・・・。

(ちなみに、一人乗りの方はこの選択肢はほぼ無いですよね。)

 

ということで、他の選択肢としては、大人用おむつをドライスーツの中に着こむ。

これはちゃんとできればOKですが、ドライな環境で用を足すことの(精神的なことを含めた)困難さ、そして使用後の処理も困難です。

そんなこともあって、私はドライスーツをやめました。最近ではドライスーツの人はそんなに多くないのかな。。。

 

※他にも、ドライスーツをボート上で脱いでする。とか、あるかもしれませんが、安全面でリスクが高いと思うので、割愛します。

 

②ウェットスーツ場合~濡れるか?濡れないか?~

一番イージーなのは、ウェットスーツで海に入って用を足すことではないでしょうか。

その問題点は、軽風以下でまったく濡れていないのに、濡れなければならない(濡れる&重くなる)。

波が高い等コンディションが悪い海域では、海に浸かることが困難。

冬は無駄に寒くなる。等でしょうか。

海に入らずそのままその場でしてしまうこともありますが、ドライスーツの中のおむつ同様、ちょっと困難なのと、やはり濡れます。

 

濡れることを極力減らそうとすると、ドライスーツより脱ぎやすいウェットスーツならではの、脱いで用を足す。

これをやっている方が多いと思います。ハイクアウトのような格好でしますが、家族以外の男性と一緒に乗っている女性セーラーにとってはハードルが高いと感じる方も多いでしょう。

 

③運営@ラバーボート

ラバーボートには通常マリントイレはないです。

夏は水分摂取を制限すると熱中症になりやすく、水分摂取と水分排出のバランスが悩ましいし、冬は寒くて選手より寒さを感じるでしょう。

選手なら海に浸かって~がまだやりやすくても、なかなかそこまでしないのではないでしょうか。陸に戻ることも難しいと辛いです。

これはボートの形状に寄りますが、スターンで脱いで用を足すということが出来ます。

そのために用を足しやすい服装をしておきます。

(少し長めのトップス+サロペットのボトムスは個人的にオススメです!)

が、こちらも男性と一緒に運営していると、ハードルが高いと感じる方も多いかと思いますが・・・。

 

人間は用を足すことが生きる上の基本的欲求であり、これを我慢したり制御することで、病気になってしまうことがある訳で、健全な欲求を満たせないことで、ヨットで健康を損なうことの無いよう、良いアイディアがある方は是非色々な工夫を教えていただけたら嬉しいです。

 

さて、この排泄物について、規則的にはどうなんでしょうね。以下、再掲規則です。

 

47ごみの処分

競技者および支援者は、故意にごみを水中に投棄してはならない。この規則は水上にいる間は常に適用される。(後略)

 

排泄物はごみに含まれますか?

まず、人間から出る直接海に出る排泄物(上から出るものも下から出るものも)は「ごみ」とは言えないですね。

 

ただ、日本ではマリントイレはついているヨット・小型船舶も、基本的には船外にそのまま排出していますが、

海外では船内タンク設置が義務付けられていて、ハーバーにバキューム施設がある国もあります。

なので、日本の現状も結構微妙・・・これから時代が変わっていくと、「溜めたものはごみ」に変わっていく可能性はありそうです。

 

あとは、公海で排出はOKです。これは公海において定めた国際海洋法条約に以下の内容があり、排泄物タンクを設置した船舶であっても活動中の排泄物を海中投棄することは「投棄」に含まれないことになっています。

 

第一部 序

第一条 用語及び適用範囲

(b)「投棄」には、次のことを含まない。

(i)船舶(中略)の設備の通常の運用に付随し又はこれに伴って生ずる廃棄物その他の物を処分すること。

(後略)

 

今日、なぜこの話をしたかというと、

Vendee Globe 2020-2021(ヴァンデグローブ世界一周レース)に日本から参加した白石康次郎さんの「DMG MORI Global One」艇の公開見学会に参加することが出来たことに端を発しています。

世界一周艇にトイレはあるのか?を質問しました。

 

あるんですね~。しかし一般的なマリントイレではなく、バケツ。

袋をバケツにかけてそこに排泄し、それを海に投棄するということでした。

これはルールに抵触するか?ですが、もちろんしませんよ。世界一周、汚物を持っていけませんし。

 

このトイレ袋はでんぷんで出来ていて、生分解されるものとのことでした。

 

Vandee Globe

Sailing Instructions

 

20 TRASH DISPOSAL   Respect for the environment is a fundamental value for the Vendée Globe. With the  exception of biodegradable items, competitors must not throw their waste  overboard. In compliance with the OSR, waste must be kept on

board until  competitors disembark.   

 

しかも、ほとんどの航程は公海上。環境に配慮した投棄をしているとのことでした。

 

さて、それにしてもやっぱりとても大きな艇で、隅々まで説明&見学させていただき、とっても楽しかったです。

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