救済要求をする。
オリンピックが終わって、ずいぶんと更新を怠ってしまいましたが、気持ちを入れ替えて書いていきます!
さて、今回は抗議の権利の回にも書いた規則60の権利の2つ目、救済要求について確認していきたいと思います。
60.1 艇は次のことができる。
(a)他艇を抗議する。
(b)救済要求をする。
(後略)
抗議は艇にしかできません。レース委員会の手違いや避けられない/守るべき事由等によって自艇(だけでなくても)が明らかに順位が悪くなった場合、救済要求を検討します。
分かりやすくするため、「レース中の自艇に救済を要求する場合」のケースとして、以下に規則をまとめます。
62 救済
62.1 救済要求(中略)は、レースのレースまたはシリーズにおける艇の得点または順位が、その艇の過失ではなく、以下のいずれかの理由により、明らかに悪くなったかまたは悪くなるかもしれないという主張または可能性に基づくものでなければならない。
(a) 大会のレース委員会、プロテスト委員会、主催団体、テクニカル委員会の不適切な処置または不手際。(後略)
(b) 第2章の規則に違反して適切なペナルティーを履行した艇、ペナルティーを課された艇、またはその艇を避けている必要があったか(中略)過失があったと判定されたレース中でない船舶の行動により被った傷害または物理的損傷。
(c) 規則1.1に従って救助(自艇またはその乗員に対する救助を除く)を行ったこと。
(d) 規則2に基づくペナルティー、または規則69に基づくペナルティーもしくは警告を受けることになった、他艇またはその乗員もしくは支援者の行動。
つまり救済とは、
・自分の過失ではなく
・大会運営の不手際、他艇の影響による傷害/物理的損傷、もしくは基本規則である規則1(安全)・規則2(公正な帆走)を遵守した、(の)ために
・得点/順位が悪くなった/なる場合
に、要求することができるものです。
やり方は抗議をするのと同じで、書面(審問要求書)で提出します。
62.2 救済要求は書面でなければならず、要求する理由を特定していなければならない。救済要求がレース・エリアで起こったインシデントに基づくものである場合には、抗議締切時刻またはそのインシデントから2時間後のいずれか遅い方までに、レース・オフィスに提出されなければならない。それ以外の救済の要求は、要求する根拠を知った後、常識的にできるだけ早く提出されなければならない。(中略)赤色旗は必要としない。
もちろん、抗議と同様、要求したからと言って救済されるとは限りません。
審問において、自艇に過失がない証明・運営に不手際があった証明・それによって順位が悪くなった証明等、これらの立証をできないと救済されないこともあるでしょう。
なお、判決で救済されることになった場合、同じ要因(レース委員会の不手際等)で影響を受けた艇は救済要求していなくても結果が調整される場合があります。
64.3 救済の判決
プロテスト委員会は、ある艇が規則62に基づき救済を受ける資格があると判決した場合、救済を求めたか否かにかかわらず、影響を受けたすべての艇に対してできるだけ公平な調整を行わなければならない。(後略)
そして、規則には救済があった場合の指針もありますので、これをベースに調整されるケースが多いでしょう。
A9 救済についての指針
(前略)
(a) 問題のレースを除き、その艇のシリーズでの全レースの平均に等しい小数点以下第1位までの得点(小数点以下第2位を四捨五入)。
(b) 問題のレースより前の全レースの平均に等しい小数点以下第1位までの得点(小数点以下第2位を四捨五入)。
(c) 救済が正当とされたインシデントの時点におけるそのレースでのその艇の順位に基づく得点。
規則60に通じる全てのことですが、抗議も救済要求も、義務ではないということもポイントです。
他の規則も含め、英語の原文は明確ですので、解釈に迷ったら原文を見てみてください。
may=できる(やってもいいけど、やらなくてもいい)
shall=しなければならない(遵守義務がある)