Destino-sailing

セーリング競技規則やレース運営を中心に、セーリングライフについて書いています。

レースの帆走>①スタート~リコールとペナルティー(前編)

リコールとスタートペナルティーも言わずもがななルールですが、大事なところですので確認しておきます。

 

29 リコール

リコールには2種類あります。

29.1 個別リコール

29.2 ゼネラル・リコール

 

30 スタートのペナルティー

スタートのペナルティーは4つあります。

30.1 I旗規則

30.2 Z旗規則

30.3 U旗規則

30.4 黒色旗規則

 

本部船では、スタートラインを読む人と旗の上げ下げする人が違うので、スタートラインを読む人はスタートについてを明確に伝えて、正しい視覚信号と音響信号が発せられるようにしましょう。

 

29.1 個別リコール

スタート信号時に、艇体がスタート・ラインのコース・サイドにある場合、または艇が規則30.1に従わなければならない場合、レース委員会は速やかに音響1声とともにX旗を掲揚しなければならない。(中略)規則29.230.3または30.4が適用される場合には、この規則は適用されない。

→準備信号P旗でスタート時にリコールしている艇がいた場合、または準備信号がI旗で1分前からスタート時までに一度でもコース・サイドに出ていた艇がいた場合、スタート時にX旗を掲揚します。これは、スタート時にはプレスタート・サイドに戻っていたとしてもX旗掲揚です。そして準備信号がZ旗でもスタート時点でコース・サイドにいる艇がいた場合は、X旗を掲揚するということになります。

 

29.1 (前略)これらの艇の艇体がスタート・ラインまたはそのどちらかの延長線のプレスタート・サイドの完全に戻るまで、またこれらの艇に規則30.1が適用されている場合には、それに従うまで、X旗は掲揚しておかなければならない。ただし、X旗の掲揚はスタート信号後4分以内か、または次のスタート信号の1分前までの、いずれか早い方とする。(後略)

→準備信号P旗の場合は、リコールした艇のすべてが完全に戻る(艇体の全部がプレスタート・サイドまで戻る)のを確認したら、X旗を降ろします。I旗規則を採用した場合、スタートを見る目が複数必要になる場合があります。1分前に出ていた艇が戻ったか?5秒前に出ていた艇が戻ったか?しかもそれぞれを両エンドの外側まで見て追わなければならないからです。

 

30.1 I旗規則

I旗が掲揚され、スタート信号前の1分間に、艇体がスタート・ラインまたはそのどちらかの延長線のコース・サイドにある場合には、スタートする前に、その艇の艇体がスタート・ラインの延長線を横切り、プレスタート・サイドまで完全に戻らなければならない。

I旗規則はスタート・ラインの延長上まで及ぶので、本部船の後ろ側でコース・サイドにいる艇がいた場合もX旗をあげなければなりません。一見クリアスタートでもX旗があがることもあり、選手も混乱しそうです。何より運営が大変になる規則ですね、最近はあまり見かけません。

 

29.2 ゼネラル・リコール

スタート信号時に、次のいずれかの場合、レース委員会はゼネラル・リコール信号(音響2声と共に第1代表旗を掲揚)を発することができる。

・レース委員会が、スタート・ラインのコース・サイドにいる艇、または規則30の適用を受ける艇を特定できない場合

・スタートの手順に誤りがあった場合

リコールされたクラスの新しいスタートの予告信号は、第1代表旗降下(音響1声)の1分後に発せられなければならず、これに続くクラスのスタートは、この新しいスタートに続けなければならない。

→最初の一艇はわかっても、あとからあとから出てくる艇が特定できない・・となったら、ゼネリコ。スタート信号前までにスタート手順に誤りがあった場合は、AP旗を掲揚して延期ですが、スタートの瞬間に誤りがあった場合は、ゼネリコでやり直しです。

そして、これらにおいて注意すべきは、黒色旗規則適用でゼネラル・リコールになった場合です。

 

30.4 黒色旗規則

黒色旗が掲揚された場合には、スタート信号の1分間に、艇体がスタート・ラインの両端と最初のマークでつくられる三角形の中にあってはならない。艇がこの規則に違反して、特定された場合には、レースが再スタートまたは再レースとなったとしても、その艇は審問なしに失格とされなければならない。ただし、レースが延期またはスタート信号前に中止された場合には、失格としてはならない。ゼネラル・リコール信号が発せられた場合、またはレースがスタート信号後中止となった場合には、レース委員会はその艇のセール番号を、そのレースの次の予告信号前に掲示しなければならず、レースが再スタートまたは再レースとなった場合には、その艇はそのレースで帆走してはならない。(後略)

→とにかく、一度でもブラックを読まれてしまったら、選手はアウトとなります。唯一失格にならないのは、読まれたとしてもそのスタート前の延期か中止だけです。スタート1分前でブラックを読まれたとしても、AP旗かN旗があがれば、失格にならないです。運営からすると、途中まではブラックを読んでいても、スタート直前で延期か中止となった場合は、失格艇の掲示をしないということです。

が、ブラックを読まれたスタートがゼネラル・リコールとなっても失格となります。黒色旗でゼネリコの場合は、失格艇が掲示されますので、次のスタートは参加できません。運営からすると、運営面の手順の誤りであっても、ゼネラル・リコールでスタートのやり直しをする場合は、失格艇を出してしまう可能性があります。手順の誤りに気付いた時、ゼネリコにしてやり直せばいいや。ではなく、すぐに延期できるよう、ギリギリまでAP旗をあげられるようにしておきましょう。

そして、ブラックを読まれて失格となった艇は、自分が参加しないゼネリコ後のスタートがスタート前の延期・中止となったとしても、またスタートした後に中止になったとしても、いずれにしても次のレースは帆走できません。もちろん、日をまたぐこともあるでしょう。前日の最終レースでブラックで読まれ、そのレースが途中で中止になって翌朝に再レースとなる場合、これに出ると失格です。

 

30.4 (前略)帆走した場合には、その艇の失格は、シリーズ得点を計算するときに除外してはならない。

翌朝になって気分一新!とうっかり出走してしまうと、除外できない得点となりますので注意しましょう。

 

運営目線の話に戻り、スタートラインを見る時は、アウターエンドのマーク/ポールとスタートフラッグポールの延長線上から視認します。ポールが太い場合は延長線かつコース・サイド側から読むと、「明確なリコール艇」を確認することができます。

リコールの信号旗(X旗、第1代表旗)は、スタート信号から12秒以内には掲揚しましょう。

 

ゼネラル・リコールを繰り返してしまいなかなかスタートがうまくいかない場合ってあります。それは、選手に因ることもあるかもしれませんが、繰り返す場合には運営に問題があると考えましょう。艇の特性やフリートの特徴、潮や風の影響も加味した適切な角度・長さのスタート・ラインを設定できているか?リコール艇の特定ができない長さのスタート・ラインを設定して、ゼネラル・リコールを発していないか?等々。

そして、うまくいかないからと、I旗規則や黒色旗規則を安易に使うと、より厄介なことになる場合もあるということです。

 

レース運営の手順はレースマネジメントマニュアルに標準化されています。

本ブログは現時点で最新のこちらのRMMを参考にしています。

https://www.sailing.org/tools/documents/RaceManagementManualJuly2019-[25256].pdf