Destino-sailing

セーリング競技規則やレース運営を中心に、セーリングライフについて書いています。

抗議をする。⑤

改めて、「抗議をする。(抗議をされる。)」とは具体的にどのような展開になるかについて整理します。

 

(前提)海上での軽微なインシデント(=乗組員の傷害or/and艇の重大な損傷がない場合)において、規則を守り、守らせる。

 

相手に規則違反があると思った場合に、その意思表明として「Protest」の声かけをします。

その時、被抗議艇側の選択肢は3つあります。

①自艇に規則の誤りがあったと認める場合、ペナルティーを履行する。

②声かけをした方の艇に規則の誤りがあったと思った場合、「Protest」の声かけをする。(双方同時になることもある。)

③自艇に規則の誤りが無かった場合は、特に何も対応しない。

被抗議艇が規則違反を認めてペナルティーを履行すれば、その規則違反は解消され、これ以上何も起きません。(この時のペナルティーは、回転ペナルティーです。SIに代替手段が記載されている場合は、その手段がペナルティーとなります。)

 

声かけをしても相手艇がペナルティーを履行しなかった場合、抗議締切時間までに審問要求書を提出します。そして、被抗議艇にその旨を伝えます。(海上で「Protest」の声が確実に伝わっていれば、陸上で再度伝えなければならない規則は無いのですが、審問要求書を出したら/出す前ならその旨は、伝えた方が良いでしょう。)

その時、被抗議艇側の選択肢は2つあります。

自艇に規則の誤りがあったと認める場合、ペナルティーを履行=リタイアする。

②審問にての判定に委ねる。

Protest」が聞こえなかった、自分が言われたと思っていなかった、そもそも規則違反した認識が無かった(ルールを知らなかった)場合や、自分が抗議されることを知って内容を確認し、自分に非があったことを認めた場合、①ということがあり得ます。リタイアすることでその規則違反は解消されます。

 

抗議する側が抗議をすることを決めるタイミングは2回あります。

①インシデントの際に「Protest」と声をかけるか、かけないか

②陸上に戻って審問要求書を出すか、出さないか

 ルール勉強会でもよく言われますが、違反があったと思ったら、まずは声かけをしておいて、実際に抗議をするかどうかは、陸上に上がってから決めてもよい。ということです。

そして審問要求書を出したら終わりではなく、その後被抗議艇がリタイア(ペナルティーを履行)しなかった場合、ここから審問がスタートします。

 

ちなみに、抗議をして審問を進めた結果、抗議した側が失格になるケースも実際にあります。インシデントが起きて、自分が審問要求書を書くと、(自分が正しいと思うから抗議をするわけですが、)自分が正しくて相手艇に誤りがあったと思い込んでしまいます。ところが前回書いたように、自分の主張を証拠・論拠をもって客観的に、規則に則って証言できなかったり、相手艇の主張・証言の方がより合理的であったりする場合に、そのようなことが起こり得ます。また、双方失格や双方規則違反無しということもあります。

 

なお、抗議側は、そのインシデントにおける相手艇の規則違反を指摘するための抗議が出来ますが、インシデントによって下がってしまった自分の順位を元に戻して欲しいといった要求はできません。

但し、インシデントによって損傷等が発生した場合は、救済の要求を出来る場合もあります。しかしそれは「軽微な」インシデントに当てはまるか?となりますし、そのようなケースを含めた救済の要求については次回に書きたいと思います。