Destino-sailing

セーリング競技規則やレース運営を中心に、セーリングライフについて書いています。

抗議をする。②

続きです。以下のケースで抗議をしてみましょう。

 

(サンプルケース1)

自艇Aスターボードで帆走している。イーブンな位置でポート艇Bがいて、あと5艇身位でミートしそう。B艇はこちらの存在には気付いている。

(ミートの約5~4艇身前)ヘッダーが入る。自艇はあと10度ヘッダーが入ってからタックしたいので、あと少し行ってタックしたい。B艇は前を通ろうとしているようだが、ギリギリ無理だろう。後ろを通らせたい。「スターボード」と声をかけた。

(ミートの約3艇身前)声をかけられたB艇は、それによって自艇の後ろを通ることを決めたようで、舵を切っている。

(ミートの約2艇身前)ベアアウェイして自艇の後ろを通ろうとするB艇だが、ヘッドセールのイーズが遅くて、ベアが遅れている。さらにヘッダーが入る。

(ケースの瞬間)自艇はスターボードタックのコース変更はなく帆走をしていたところ、ポート側のスターンにB艇が接触した。

すぐに接触箇所を確認したところ、ゲルコートが剥げた程度で、レースはこのまま続行できそうだ。相手艇の損傷も無さそうだ。

 

とりあえず「Protest」と声をかけました。

次にすることは何でしょうか?

 

すること、していいこと、してはいけないことを見つけてください。

①抗議書(審問要求書)を書く。

②運営に抗議する旨の申告をする。

プロテスト委員会のメンバーに知り合いがいたので相談する。

ジャッジの資格を持つ友人に電話で相談する。

⑤抗議は面倒なので、相手艇にリタイアするように申し入れる。

 

はい、どんどんいきましょうね。

することは、①抗議書(審問要求書)を書く。です。根拠は、以下です。

 

61.2 抗議内容

抗議は書面で以下のことを特定しなければならない。(後略)

 

「Protest」と伝えなければ抗議は始まりませんが、抗議書(審問要求書)を書いて出さなければ抗議をしたことになりません。

 

次に、②運営に抗議する旨の申告をする。ですが、運営上の理由でSIに記載されていることがありますので、記載されていたらそのようにしてください。ただ、その場合でも申告をしたら抗議を受け付けてもらえるということではありません。抗議受付時刻までに、抗議書(審問要求書)を提出してはじめて、抗議が受け付けられます。その根拠は、以下です。

 

61.3 抗議締切時刻

艇による抗議(中略)は、帆走指示書に記載された抗議締切時刻までに、レース・オフィスに提出されなければならない。(後略)

 

それ以外は相手がOKなら、別にしていいです。

ただ、③プロテスト委員会に知り合いがいたので相談する。は、ほぼ受け入れられることはないでしょう。理由は、利害関係があると思われる行動は、抗議者にとってもそのプロテスト委員・レース運営側にとっても得策ではないからです。

 

63.4 利害関係

(a) プロテスト委員会のメンバーは、利害関係の可能性に気付いたら、できるだけ早く表明しなければならない。プロテスト委員会のメンバーに利害関係があると考える審問の当事者は、できるだけ早く異議を申し立てなければならない。(後略)

 

定義 利害関係

ある人は次の場合、利害関係があるという。

(a) その人物が関与する決定の結果、自身に損得が生じる場合。

(b) 公平である能力に影響を与えうる、個人的または経済的利害関係があると、常識的に見ることができる場合。

(c) ある決定に関し、密接な個人的利害がある場合。

 

定義 当事者

審問の当事者とは以下の者である。

(a) 抗議の審問では、抗議者、被抗議者。

(後略)

 

つまり、抗議者がプロテスト委員会のメンバーと個人的な関係があると、プロテスト委員会のメンバー(相談された本人を含む)・被抗議者が考えた場合、申し立てをします。場合によっては相談された人はプロテストメンバーから外れます。ショートハンドで運営していると、プロテスト委員会・審問そのものに影響します。というより、やはり審問の公平性の観点から、競技者から相談を受けたプロテスト委員会のメンバーがその相談に応じるケースはほぼないでしょう。

メンバーから外れない場合は、一応以下がありますが・・・。

 

63.4 利害関係

(b) 利害関係のあるプロテスト委員会のメンバーは、審問を行う委員会のメンバーになってはならない。ただし、次のいずれかの場合を除く。

 (1) すべての当事者が同意した。

 (2) プロテスト委員会が、利害関係は顕著ではないと判断した。

 

次の、④ジャッジの資格を持つ友人に電話で相談する。も、相手が応じればしても良いでしょう。但し、先述の理由より、当該レースに携わっていない人に相談しましょう。また、そのアドバイスが審問でどれだけ有効になるかという観点では、相談にあまり意味がないこともあるでしょう。審問で「知り合いのジャッジの人がこう言ったから。」と言っても、それは何の根拠にもなりません。

 

最後の、相手艇にリタイアするように申し入れる。も、相手が応じるかどうかは別として、すること自体は問題ないでしょう。相手が自分の規則違反に気付いていないことがありますからね。

 

いかがでしたか?してはいけないことはありませんでした(クイズとしてよくなかったですね、すみません。)が、プロテスト委員会の視点であえて言うなら、それは③かな。

 

次回は、「抗議書(審問要求書)を書く。」です。