抗議の権利
ここまで、海上で選手がセーリングする中で守るべき規則を中心に書いてきました。
ということで、基本原則の「スポーツマンシップと規則」を再掲します。
基本原則
スポーツマンシップと規則
セーリング・スポーツの競技者は、守り守らせる一連の規則により統制されている。
スポーツマンシップの基本原則は、艇が規則に違反し、かつ免罪されない場合、速やかに適切なペナルティー履行もしくは行動することであり、その行動はリタイアの場合もある。
はい、基本原則で、規則を守ることが求めれています。そして競技中に自らが規則に違反した場合、適切なペナルティーを履行することが求められています。
ところが、レースに出て他艇と接近する状況で、自分は規則を守っていると思っていても抗議されたり、規則違反をしてもペナルティー履行をしない艇がいたりします。
レースに出たからと言って、必ず遭遇するわけではないけれど、だからこそ遭遇すると慌ててしまうのが「プロテスト!」と言われたり、言うようなシチュエーション。
ここから何回かは、抗議って?どうやって抗議する?抗議すると何が起こる?等々、書いていきたいと思います。
やっぱりまずは、定義の確認から。
定義 抗議
艇が規則に違反したことに対する、艇、レース委員会、テクニカル委員会またはプロテスト委員会による規則61.2に基づく申し立てを抗議という。
61.2 抗議内容
抗議は書面で、以下のことを特定しなければならない。
(a) 抗議者と被抗議者。
(b) インシデント。
(c) インシデントがいつどこで発生したか。
(d) 抗議者が、違反があったと考える規則。
(e) 抗議者の代表者の氏名。
(後略)
抗議の定義も規則61.2もすごく簡単に読めますね。でも、理不尽だ~と思うことがレース中に発生したりすると、何に抗議するのか分からなくなってしまったり、また、レース中にその全てを立証できるように準備するのは、結構大変です。細かくは、次回以降の回に書きたいと思いますので、今回は、タイトルの通り、抗議は一つの権利だということをお伝えします。
第5章 A節 抗議、救済、規則69の処置
60 抗議の権利、救済要求の権利、または規則69の処置
60.1 艇は次のことができる。
(a) 他艇を抗議する。
(b) 救済要求をする。
(c) 規則60.3(d)または69.2(b)に基づく処置を要請してプロテスト委員会に報告する。
たまに、レース委員会の不手際に対して抗議する!と言う方がいらっしゃいますが、レースに参加している競技者・艇の場合、抗議は規則に違反した他艇に対しての申し立てのみです。レース委員会に対してRRS上抗議は出来ません。(文字通りの「抗議する!」は言えたとしても、RRS上効力はないです。の意。)
レース委員会への申し立てをする場合は、救済要求のみとなります。(これについてもまた次回以降の回に。)
最後に、そもそも基本原則にある「守り守らせる一連の規則」って?を一応書いておきます。セーリング中以外の規則も含まれます。
定義 規則
次のものを規則という。
(a) 本書の規則。これには、定義、レース信号、序文、前文および関連する付則の規則を含む。(後略)
→RRSを指します。
(b) World Sailing規定集のうち、World Sailingにより規則であると位置付けられ、かつ、World Sailingのウェブサイトで公開されている規定。
→2021年6月現在公開されている規定は、RRS2021-2024日本語訳第1版の第1章規則6に記載されている6つの規定です。
(参考)本ブログのスポーツ倫理の回
(参考:最新版はこちらから確認してください)
https://www.sailing.org/documents/regulations/regulations.php
https://www.jsaf.or.jp/hp/about/committee/rule/rule-reg
(c) 各国連盟規程。ただし、規則88.2に関する規程がある場合にはその各国連盟規程に従って、レース公示または帆走指示書で変更された場合を除く。
→いつか、どこかの回で書くかもしれません。
(d) クラス規則(ハンディキャップ・システムまたはレーティング・システムでレースを行う艇にとっては、そのシステムの規則が「クラス規則」である。)
→いつか、どこかの回で書きます。
(e) レース公示。(英語表記:the notice of race:NOR)
(f) 帆走指示書。(英語表記:the sailing instructions:SI)
→例えば、規則28 レースの帆走 の違反についての根拠は、NORやSIに記載のコース図になるということだったり。
(g) 大会を管理するその他の文書。
→コロナ禍における大会運営上の、感染拡大予防や健康管理のガイドラインがそれにあたりそうですね。
そして、上記の規則に違反した艇に対して申し立てる抗議ですが、抗議が出来ないという例外もあります。その例外についてや、セーリング中以外の規則についてもまた、おいおい書いていきたいと思います。