Destino-sailing

セーリング競技規則やレース運営を中心に、セーリングライフについて書いています。

ペナルティーの履行

さて、今までの回で紹介してきた規則のほとんどは、違反した場合、海上でそのペナルティーを履行できるものです。

 

ということで、今回はペナルティーの履行について、まとめたいと思います。

前提は、こちら。基本原則を再掲しておきます。

 

基本原則

スポーツマンシップと規則

セーリング・スポーツの競技者は、守り守らせる一連の規則により統制されている、スポーツマンシップの基本原則は、艇が規則に違反し、かつ免罪されない場合、速やかに適切なペナルティーまたは行動をとることであり、それはリタイアの場合もある。

 

自ら履行できるペナルティーの種類は以下の規則に記されています。

 

44 インシデント時のペナルティー

44.1 ペナルティーの履行

レース中に、1件のインシデントで1つかそれ以上の第2章の規則に違反したかもしれない艇は、『2回転ペナルティー』を履行することができる。規則31に違反したかもしれない艇は『1回転ペナルティー』を履行することができる。別の方法として、レース公示または帆走指示書により『得点ペナルティー』またはその他のペナルティーの適用を規程することができる。その場合、規程されたペナルティーを『1回転』または『2回転ペナルティー』と置き換えなければならない。

(中略)

(b) その艇が傷害または重大な損傷を引き起こしたり、違反により、ペナルティーを履行したとしてもそのレースまたはシリーズにおいて明らかに有利となった場合には、その艇のペナルティーはリタイアすることでなければならない。

 

ペナルティーの履行は

①規則31(マークとの接触)においては1回転

②その他の第2章規則においては2回転

NORSIに記載のあった場合は、①②が得点ペナルティーという場合もある

④重大な損傷を引き起こしたり、レース・レガッタで有利になる規則違反をした場合は、リタイアでペナルティーを解消できる(フィニッシュ後にもリタイアできる)

要は、スポーツマンシップに則って規則を守り、守れなかった場合には規程のペナルティーを履行すること。ということです。自分が違反があったと思ったらペナルティーを履行しましょう。

 

さて、①マークタッチは普通は自分で気付けると思います。④も接触等で重大な損傷を与えた場合になると思うので、気付くことが多いでしょう。自分が無事だからとレース続行するのは、相手あってのスポーツですから、スポーツマンシップ違反です。(相手の重大な損傷に気付かなくてレース続行してしまうことはあるかもしれませんが、後でリタイア出来ます。)

では、②はどうでしょうか。自ら誤りを自認した場合はペナルティーの履行をすればよいのですが、例えば抗議をされた時に自艇に違反が無い!と思ったら?

 

自艇に違反が無いことを立証できるのであれば、ペナルティーを履行しなくても良いです。つまり、「抗議をされたら回らなければならない」わけではないということです。ただ、審問で負ける可能性はありますから、それを含んでペナルティーを履行しなければ良いわけです。

「抗議されたから一応ペナルティーを履行して、そして相手艇を抗議する」という発想(ケース)を見受けますが、その「ペナルティーを履行した」事実は自分が違反を認めた証となることをお忘れなく。自分の判断・行動の意味について、よくよく整理しましょう。

抗議についての詳しくは、別の回に書こうと思っています。

 

①②の回転の仕方は以下です。

 

44.2 1回転と2回転ペナルティー

艇はインシデントの後できるだけ早く他艇から十分離れた後、1回のタックと1回のジャイブを含む回転を、同一方向に必要数だけ速やかに行うことにより、『1回転』または『2回転ペナルティー』を履行したこととする。(後略)

 

ケースに泡を食って慌ててペナルティーを履行、つまり他艇から十分に離れずにペナルティーを履行したり、「回転」360度回転・740度回転と勘違いしてタック・ジャイブの回数を端折ってしまったり、というのはありがちですので、なんのケースでペナルティーを履行するのか、周囲をよく見て、冷静に判断・行動しましょう。

 

マークタッチしたと思って1回転ペナルティーを履行したけれど、実は他艇からゾーン内でのルールで抗議されていたりすることもあります。その場合は履行すべきペナルティー2回転です。

では、他艇とのケースにおいてマークタッチもしてしまった場合は、3回転??と慌ててしまう前に、以下の規則があることも知っておきましょう。

 

44.1 ペナルティーの履行

(前略)

(a) 艇が同一のインシデントで第2章の規則と規則31に違反した場合、規則31違反によるペナルティーを履行する必要はない。

(後略)

※前後略部分は上述。

 

あくまでも同一のインシデントの場合の話ですので、ケースを起こした後にマークを回航してから2回転しようと思って、そのマーク回航でマークタッチしたような場合などは、明らかに同一のインシデントではないですので、その場合は3回転することでペナルティーを解消することが出来ます。

 

そして、③が採用されている場合は、以下です。

 

44.3 得点ペナルティー

(a) 艇は、インシデントの後、最初の妥当な機会に黄色旗を掲揚することにより、『得点ペナルティー』を履行したこととする。

(b) 艇が『得点ペナルティー』を履行した場合、黄色旗をフィニッシュするまで掲揚し続け、フィニッシュ・ラインでその旗についてレース委員会の注意を喚起しなければならない。(後略)

 

オフショアレースで適用されることが多いですが、出走艇数の多いレースで適用されることもあります。いずれにしても、NORSIに記載があって初めて適用されるものですから、適用レースに出走する場合は、黄色旗を準備するのを忘れないようにしましょう。