基本の基～スターボ！と下！～

RRSの基本構成の回でも紹介した超基本のところに入ります！

第2章　艇が出会った場合

A節　航路権

ヨットに乗り始めて、一番初めに教わることは、この航路権かと思います。基本の基。

ディンギーであれば、スロープから艇を浮かべて乗り込んだ瞬間から、このルールが適用されます。

10　反対タックの場合

艇が反対タックの場合、ポートタック艇は、スターボードタック艇を避けていなければならない。

11　同一タックでオーバーラップしている場合

艇が同一タックでオーバーラップしている場合、風上艇は、風下艇を避けていなければならない。

12　同一タックでオーバーラップしていない場合

艇が同一タックでオーバーラップしていない場合、クリア・アスターン艇は、クリア・アヘッド艇を避けていなければならない。

こちらも記載しておきますね。

（海上衝突予防法）

第12条

二隻の帆船が互いに接近し、衝突するおそれがある場合における帆船の航法は、次の各号に定めるところによる。（後略）

1）二隻の帆船の風を受けるげんが異なる場合は、左げんに風を受ける帆船は、右げんに風を受ける帆船の進路を避けなければならない。

2）二隻の帆船の風を受けるげんが同じである場合は、風上の帆船は、風下の帆船の進路を避けなければならない。

海に出たら、スターボード艇/風下艇に権利があるということが明確ですね。

なぜ、この規則があるかというと、当たり前ですが、ぶつからないように、です。海上衝突予防法には他にも出航船優先(港に入る船と出る船がミートしたら、出る船が優先)というもの等もあります。

RRSでも接触回避についての規則があります。詳しくは別の回にしますが、一応紹介しておきます。

14　接触の回避

艇は、常識的に可能な場合には、他艇との接触を回避しなければならない。（後略）

話を元に戻しますが、レースのシーンではしばしば航路権についてが争点になります。

「避けたvs避けてない問題」は審問の場でよく出てくることなので、避けていることの定義の確認もしておきましょう。

定義　避けている　次の場合は、艇は航路権艇を避けているという。

(a)　航路権艇が、回避行動をとる必要なく自らのコースを帆走できる場合。

(b)　艇がオーバーラップしているときに、航路権艇が直ちに接触することなく、いずれの方向にもコースを変更できる場合。

(a)は、自分が非航路権艇であった場合、航路権艇に避けさせる行動をさせてはならないということ。

逆に言うと、自分が航路権艇であった場合、どんなに権利を主張（スターボ！下！の声掛け）してもあまり意味はなくて、ヘッディングを変える＝舵を切ることが明確な回避行動となりますので、航路権を主張して抗議をする場合には、回避行動をとったかどうかが重要で、回避したならば、その証が必要となります。

(b)は、自分が規則11（同一タックのオーバーラップ）で非航路権艇の場合、相手艇が自由に動ける状態を作っておかなければならないということなので、航路権艇として抗議をする場合には、他の規則を用いて反論されない証があると良いです。

さて、これらの規則は他艇で同じ方向を向いて帆走している時はあまり迷うことないかと思いますが、風上航/風下航の艇が入り混じっていいるところを帆走していると、混乱しがちです。

自艇のタックと、相手艇のタックを認識して、ルールに照らし合わせることが大事です。

以下A~K、自分が艇団の中盤でマークラウンディングをしている中でのケースをイメージして考えてみてください。

※マークは上・サイド・下マークが風位に対して適正に設置されている。

※風速8～10knot/s程度で、大きな波やうねりは無し、全てゾーン外。

※ケースではお互いに避けられるルームがある。

※マークラウンディングはアンクロック。

A　スターボードのクロースホールドでポートのレイライン方向に帆走中、上マークを回航した先頭艇がポートで下りてきてミートしそう！

　避ける？避けない？

B　上マークに向けて帆走中、ポートにタックしたところ、上マークを回航した艇団がポートで下りてきてミートしそう！

　避ける？避けない？

C　スターボードレイラインでトラブって止まっているスターボード艇の後方を通過してタックし、風上側にオーバーラップしたところでトラブルを解消した艇が帆走を始めた。マークは10度風下側にあるが、風下側艇はクロースホールドで帆走を始めた。

　避ける？避けない？

D　上マークを回航しサイドマークにヘディングを向けたら、目の前から上マークにアプローチするポート艇がきた。

　避ける？避けない？

E　上マークからサイドマークへ激しく上り合いして帆走していたところ、前を帆走する艇に追いついたので、風下側の手を伸ばせば届く位置にオーバーラップしたところ、風上艇がかなり風下側にあるマークに向けて、角度を落としてきた。

　避ける？避けない？

F　サイドマーク回航後、上り目で帆走中、後ろから追いついた艇が風上側にオーバーラップし、マークに向けて角度を落としてきた。

　避ける？避けない？

G　下マーク回航時、先に前で回航していた艇がトラブルでそのまま止まっていた。

　避ける？避けない？ 

H　下マーク回航後、即タックしたら下マークに向かってくるスターボード艇がいた。

　避ける？避けない？

I　上マークを回航後、ジャイブしたところ、目の前を上マークにアプローチするスターボード艇がいた。

　避ける？避けない？

J　下マークに向かってポートで帆走中、同じくダウンウィンドを帆走中のスターボード艇が左舷から近付いてきた。

　避ける？避けない？

K　下マークに向かってポートで帆走中、接近してきたそのスターボード艇をさけるためにジャイブしたところ、目の前にポート艇がいた。追いついてしまいそうだ。

　避ける？避けない？

はい、基本の基の３つのルールを想定して考えるケースでした。

図を見るとわかりやすいと思いましたので、あえて文章にしてみました。

自分がセーリングしているところを想像しながら考えると、よいイメトレになると思います。

答え

A　避けない

B　避けない

C　避ける

D　避けない

E　避ける

F　避けない

G　避ける

H　避けない

I　避ける

J　避ける

K　避けない

ひっかけ問題も忍ばせましたが、いかがでしたか？

クイズの解説は次回・・・。