Destino-sailing

セーリング競技規則やレース運営を中心に、セーリングライフについて書いています。

障害物における規則

さて、本題に入りますが、少し難しいので、一つずつイメージしながら読み解きます。

 

19.2 障害物においてルームを与えること

(a) 航路権艇は、障害物のどちら側を通過するかを選ぶことが出来る。

 

風上航でのポートタックで近い位置でオーバーラップしている2艇間のケースを想像してみてください。

自艇がオーバーラップしたポートの風下艇だとします。ポート艇の2艇間では、自艇が航路権艇です。そこに、両艇とミートする位置にスターボード艇が来ます。航路権艇である自艇は障害物であるスターボード艇のどちら側を通過するか選ぶことが出来ます。

つまり、タックして受けることも出来るし、ベアして後ろを通ることも出来ます。

タックして受ける場合のことは次回以降にして、ベアして後ろをを通ることにします。

 

(b) 複数の艇がオーバーラップしている場合、外側艇は内側艇に、自艇と障害物の間のルームを与えなければならない。(後略)

 

自艇が障害物であるスターボード艇をベアして避ける時に、風上側にオーバーラップしているポート艇も、そのスターボード艇とミートです。そのポート艇が、スターボード艇をベアして避ける場合、障害物に対して外側艇である自艇は、内側艇である風上艇に障害物を通るルームを与えなければなりません。

また、そのポート艇より更に風上側にオーバーラップしているポート艇がいた場合、各艇間で風下の航路権艇が存在し、それぞれが障害物(スターボード艇)のどちら側を通過するか選ぶことができます。航路権艇が障害物を避けるためにベアする場合、同様に内側を通過するルームを与えなければならないです。つまり、このようなシーンで風上側にオーバーラップする艇が複数あった場合、自艇とオーバーラップした風上側の各艇間で上記と同じことが複数艇間分起きると、自艇は延々と風上艇団にルームを与える必要があります。

(a)のシーンで自艇が障害物のどちらを通過するか選べますので、状況をよくみてどちら側を通過するか選択しましょう。

 

(b)  (前略)ただし、オーバーラップが始まった時からではルームを与えることができない場合を除く。

 

いつオーバーラップしたかによって、不可避であれば仕方ないですが。ということですね。

マークルームの規則同様、あくまでも障害物を通過するための規則です。そもそもの航路権ではポートの風上艇は非航路権艇です。もし自艇が非航路権艇の場合は、障害物の大きさ・自艇のスピード/角度やケイパビリティ・周囲の艇との位置関係等をよく見て、舵取りの判断をしましょう。

 

(c) 複数の艇が連続する障害物を通過している間、クリア・アスター避けていなければならない艇が、相手艇と障害物の間にオーバーラップし、オーバーラップが始まった時点で、それらの間を通過するルームがない場合には、

 (1) その艇には規則19.2(b)に基づくルームを得る資格はない。

 (2) オーバーラップが続いている間、その艇は避けていなければならず、規則10と規則11は適用されない。

 

これは、突然の割り込み禁止ということですね。障害物の特性も考えてみましょう。障害物は航路権艇だけではありません。複数の沈艇や島である可能性もあります。いくらスピードが良くて無理矢理突っ込んでオーバーラップ出来てルームをくれと言っても、もはや外側艇が避けられない場合、障害物に突っ込むことになりますよ。いくら航路権があってそんなことしては、ダメですよ。スピード落としてでも、順番に通過してください。さもないと、自艇が別の障害物になりかねないですよ~~。

 

障害物の規則で難しいところは、マークルームの規則と違って「ゾーン」という規則が適用されるエリアが明確ではないことです。

(a) 航路権艇は、障害物のどちら側を通過するかを選ぶことが出来る。

とはいえ、どのタイミングで選んで行動するか、その間にも航路権の入れ替えが発生する可能性もあるわけです。障害物は安全のためのルールでもあるので、繰り返しになりますが、自分の行動の意思表示をどのタイミングですることが適切か、それを障害物の状況・自艇と他艇の状態・周囲の艇との位置関係等から判断をしましょう。