Destino-sailing

セーリング競技規則やレース運営を中心に、セーリングライフについて書いています。

航路権 規則17

今回は「基本の基」でひっかけ問題(以下、再掲)に出てきたルールについて。

 

E 上マークからサイドマークへ激しく上り合いして帆走していたところ、前を帆走する艇に追いついたので、風下側の2艇身の位置にオーバーラップしたところ、風上艇がかなり風下側にあるマークに向けて、角度を落としてきた。 

規則17 避ける

 

一応、避ける。としました。まずは基本のところなので。

風下艇なのに?というひっかけ問題なだけに、このような状況で風上艇を突き上げる艇をしばしば見受けます。

 

17 同一タックでのプロパーコース

クリア・アスター艇が、同一タックの相手艇の風下に自艇の2艇身以内でオーバーラップした場合には、両艇が同一タックで2艇身以内の間隔でオーバーラップがが続いている間、その風下艇はプロパー・コースより風上を帆走してはならない。(後略)

 

簡単に大まかに言うと、(イメージしやすいのはクロースホールド以外で帆走中)後ろから追いついて風下側の2艇身以内にオーバーラップした時、風下艇だからと言って風上艇に対して、自艇が次のマークに向かっているヘディングより風上側までプッシュしてはだめよ。ということです。

自艇が主張するプロパー・コースよりも風上艇が落として来たら、風下艇の航路権はそのままあるけれど、クリア・アスターンから風下側にオーバーラップしてプロパー・コース以上に突き上げるのはNGよ。よということです。

 

ここで、先ほど「一応、避ける。」と記載したことについて、補足しておきます。基本的に、プロパー・コースとは、風上航であればクロースホールドのヘディング、風下航であればマークに向かっているヘディングです。プロパーコースの定義はこちら。

 

定義 プロパー・コース

この用語を用いている規則に関わる他艇がいない場合、コースの帆走およびできるだけ早くコースを帆走しフィニッシュするために選ぶであろうコースをプロパー・コースという。スタート信号前、艇にはプロパー・コースはない。

 

風上航であればクロースホールドのヘディング、風下航であればマークに向かっているヘディングがプロパー・コースの基本ですが、それ以外のヘディングに向けてもプロパー・コースである可能性はあります。

例えば、風上航でマークにシュートする場合もあるでしょうし、風下航は艇種によっては落とせる角度が異なるため、そもそもどのヘディングもしくはアングルがプロパー・コースとは言えなかったり、またパフを取りに上ったり下ったりということもあるので、必ずしもマークに向かうヘディングとは限らないです。

つまり、規則17のケースでも風下艇がプロパー・コースを主張して風上艇をプッシュ出来る場合もあるということです。こういった状況で接触があり審問になった場合、それがプロパー・コースだったか?が論点になります。周りに艇がいない場合にそのコースを取るかどうか、がプロパー・コースを主張できるかのポイントになります。こういったヘディングtoマーク以外のプロパー・コースの主張は、その立証が非常に難しいので、抗議をされた場合は風速・風向・パフ/ラル・波や潮の状況・艇のケイパビリティ全ての情報を駆使して自艇のプロパー・コースを立証することになります。また当然ながら、プロパー・コースはどこだったか、がインシデント以前も以後も不明瞭な場合が多いです。逆に自艇が風上艇で規則17で風下艇に抗議を出す場合は、風上艇のプロパー・コースは関係ないので、相手艇のプロパー・コースを立証するという、かなり難易度の高いプロセスになります。

 

なお、スタート信号前はプロパー・コースはないので、風下艇は風上艇のコースよりさらに風上のコースを帆走しても、避けるためのルームさえ与えていれば違反はないです。(たとえその避けるためのルームがコースサイドにあったとしても、ルームがあったのであればOKです。)

 

小難しくなってきたので、次回へ続く・・・。