Destino-sailing

セーリング競技規則やレース運営を中心に、セーリングライフについて書いています。

マークルームを与えない場合

さて規則18が少し複雑なので分かりやすく説明するために、この規則が適用されない場合等、つまりマークルームを与えなくて良い場合についてを、先に挙げておいてしまいます。しかし、その与えなくて良い場合も複雑なので、先に割り切ってまとめてしまいます。

要は、(私の理解では、私が想像する日本国内のレースで起こりえるほとんどの場合において)ゾーンでオーバーラップしているのにマークルームを与えなくてよい場合は、風上にあるマークでの反対タックの艇の間です!

 

風上マークでの反対タックの艇間だけと読み解きましたが、その複雑なことを書いてあるルールブック、以下はこんなことが書いてあるのだということと、何かあったら検討する箇所として、留めておいてください。

 

18.1 規則18が適用される場合

(前略)ただし、次の場合には適用されない。

(a) 風上に向かうビートで反対タックの艇間。

(b) 両艇ではなくどちらか一方の艇のマークにおけるプロパー・コースがタックすることである場合の、反対タックの艇間。

(c) マークに向かう艇と、マークから離れる艇間。

(d) マークが連続した障害物の場合には、規則19が適用される。

規則18は、マークルームがすでに与えられた艇の間では適用されない。

 

(a)例えばアンクロックのラウンディングでゾーンに到達した内側艇がポート艇だった場合、スターボード艇はポート艇にマークルームを与える必要はない。

「風上に向かうビート」についてですが、プロパー・コースがクロースホールドまたはそれより風上の場合、風上に向かうビートにいる。といいます。(ケース・ブック ケース132)これは、風上へ向かうレグにいる場合でも必ずしも風上に向かうビートにいるとは限らない。レイラインをオーバーセールていたらクロースホールドより落として帆走する。等ため、明記されています。

(b)は「風上に向かうビート」ではなくても、タックしたらマークをフェッチングする位置になる艇とそうではない艇が反対タックの場合(だと思います)。オーバーセールで角度を落としてマークに向かっているスターボード艇とポート艇の間等。

(a)+(b)で風上マークの反対タック艇間のことを指していると思います。

(c)は大丈夫ですね。

(d)は障害物の場合で、規則19は障害物の避け方の規則ですので後の回で。

それから今回のルール改正で付け加えられたのが最後の一文ですが、追加された理由は、ルールの意図するものを整えるためのものなので、基本的にはマークルームは一度与えたら、その艇間(双方)においてそれ以上はなく、終わりとなるということを意味しています。(再度与えたり、与え返したりはない。)

 

それから、状況としてはルール適用範囲でも、マークルームを与えなくてよい場合はこちら。

 

18.2 マークルームを与えること

(d) マークルームを得る資格がある艇が、風位を超えたか、もしくはゾーンから離れた場合には、規則18.2(b)および(c)の適用は終了する。

(f) 艇がクリア・アスターから、または他艇の風上でタックすることによって内側にオーバーラップし、そのオーバーラップが始まったときからでは、外側艇がマークルームを与えることができない場合には、マークルームを与える必要はない。

 

(d)は(今回のルール改正で修正が入った箇所ですが)、「マークルームを与えられる艇が風位を超える」は、上マークを想像するとわかりますが、風上航でマークルームは同一タック艇間しかないので、タックする=反対タックになるのでマークルーム適用はなくなります。それから「ゾーンから離れた場合」は2パターンあると思いますが、マークを回ってから離れる場合と、マークを回る時にそのままゾーンから出てしまう場合ですが、いずれの場合もゾーンから一度出たら、一からやり直しとなるということです。

(f)は、クロックラウンディングのレースで艇速が異なる艇間を想定しています。例えばスターボードでマーク際でタックしてラウンディングしようとした艇の前を通過したポート艇が風上側でタックしてオーバーラップした場合、同タックではあるものの、もはやマークルームを与える余地がないなら、仕方ない。という解釈のようです。

 

なんだか少し歯切れが悪い回ですが、微風で風よりも強い潮の中でのレースを想定したり、明確でない定義や規則の穴をつくケースが起きていて、過去に高頻度で整合性を整えるための変更が加えられているのがこの規則18。勉強して、また更新していきたいと思います。

 

過去3回で「マーク」「マークルーム」「ゾーン」と、今回「マークルームを与えなくてよい場合」を整理しました。その上で「マークルームを与えること」についての規則を読むとシンプルにわかりやすくなると思い、あえて本題を後ろ回しにしました。ということで、次回、ついに本題です。