Destino-sailing

セーリング競技規則やレース運営を中心に、セーリングライフについて書いています。

オーバーラップ

前回も出てきた以下の定義。

クリア・アスターンとクリア・アヘッドはわかると思いますが、オーバーラップは簡単そうで実はややこしい。

 

定義 クリア・アスターンとクリア・アヘッド、オーバーラップ

艇体および正常な位置にある装備が、相手艇の艇体および正常な位置にある装備の最後部から真横に引いた線より後ろにある場合、その艇は相手艇のクリア・アスターンにあるといい、相手艇はクリア・アヘッドにあるという。いずれの艇もクリア・アスターンでない場合、両艇はオーバーラップしているという。ただし、両艇の間にいる艇が両艇とオーバーラップしている場合もまた、両艇はオーバーラップしているという。これらの用語は、同一タックの艇に適用される。反対タックの艇間には、次のいずれかの場合にのみ適用される。

・艇と艇の間に規則18が適用される場合

・両艇が真の風向に対し90度を超えた方向に帆走している場合

 

オーバーラップというのは、同一タックでラップしていること。ただし、風向に対して90度よりダウンウィンドで帆走する場合と規則18が適用されている時は、反対タックでもオーバーラップしているという。のです。

 

出来るだけ図を使わずにケースをイメージする方が、より自分ごととして考えられると思っているのですが、さすがにオーバーラップは文章だと簡単で、実際はあれ?ってなるところなので、図を描きました。

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AとBはオーバーラップしているか

→している

AとCはオーバーラップしているか

→していない

AとDはオーバーラップしているか

→している

CとDはオーバーラップしているか

→している

DとGはオーバーラップしているか

→していない

EとGはオーバーラップしているか

→している

 

AC、オーバーラップしているように見えますが、「艇の艇体および正常な位置にある装備の最後部から真横に引いた線」がこんな状態のこともありますよ、というサンプルとして描きました。

以下のように図の上では線を引くのは簡単ですが、海上でこういうケースはよくあると思いますので、オーバーラップしているかしていないか分からない時は、スターンのラインを目で見て確かめるのが良いです。

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では、こんなシーンではどうでしょうか。下マークに向かっている艇団です。

 

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Aとオーバーラップしている艇はどれか?

Fとオーバーラップしている艇はどれか?

 

 

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Aとオーバーラップしている艇はどれか?

→BとDとF

Fとオーバーラップしている艇はどれか?

→全艇

 

この図で言いたいことは、結構艇間が離れていても、オーバーラップしている状態になりえるということです。

 

次の図はサイドマークだと思ってください。

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Aとオーバーラップしている艇はどれか?

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Aとオーバーラップしている艇はどれか?

→全艇

 

もう大丈夫ですよね。90度よりダウンウィンドですから、反対タックでもオーバーラップしていることになります。

では、同じシチュエーションですが、大きく風向が変わってしまった場合はどうでしょうか。

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上マーク方向からサイドマークに向かう艇は風向に対して90度より上っていますから、反対タックの艇の間この場合CとDはオーバーラップしていない状態と言えます。

さて、でも、これはオーバーラップしています。理由は規則18が適用されている時だからです。

 

18 マークルーム

18.1 規則18が適用される場合

規則18は、マークを艇の同一の側で通過することが求められている複数の艇間で、少なくともそのうちの1艇がゾーンに入っている場合に、その中の艇と艇との間に適用される。(後略)

 

ふむふむ。なるほど。では、上マークでもゾーンの中で反対タックでミートした艇間ではオーバーラップしているから、マークルームもらえる!・・・ということはありません。

 

18.1 (前略)ただし、次の場合には適用されない。

(a)風上に向かうビートで反対タックの艇間。

 

規則18が適用されないケースは他にもありますが、これは次回以降に書きたいと思います。