Destino-sailing

セーリング競技規則やレース運営を中心に、セーリングライフについて書いています。

リアルとバーチャルの狭間で

20数年前に始めて海に出て以来、ヨットを始めていなかったら出会えなかった人に出会うことが出来、住んでいる・育ってきたところに限らない世代を超えた国内外の友人ができました。セーラーの友人のおかげでよりヨットの世界が広がり、そして友人を介しての輪はセーラー以外へも広がり、私の人生を豊かにしてくれています。

それが、セーリングをやっていて一番良かったことと言っても過言ではないです。

 

そして今はネットのおかげで遠近関係なく、人間関係を育てていくことが出来ます。バーチャルレガッタで仲間と会えたり、メディアやSNSのおかげで世界のセーリングニュースを共有でき、仲間の活躍を知ったり。また、人間関係だけでなく、レース運営上も抗議の提出をアプリで出来たり、審問をzoomでやったりと、世界中どこにいてもセーリングに関わることが出来ます。

 

オンライン化するセーリング界に賛否両論あるでしょうが、それ無しに豊かな情報が得られないのも事実です。とは言えリアルに勝るものもなしなので、両輪で海原に出て行くというのが一つの解かもしれません。

 

さて、正にそんな両輪を媒体となってセーリング界を支えてくれているものの一つが日本ではKazi誌でしょうか。

実は今までもにも何度か顔出しさせてもらっていますが、今月号(202107月号)にも協力させていただきました。

www.kazi-online.com

今回のKazi誌のメインは「夏と言えばクルージング!」という特集です。

レースについてばかり書いているこのブログですが、クルージングも私にとってはとても楽しいセーリング活動の一つです。

 

一人でも多くの方が、海に出て風を感じてセーリングすることの素晴らしさを経験してもらえたらいいなぁと願っています。

 

レース信号旗

レース信号旗はRRSの一番初めに見開きのページがあり、視覚信号の上げ下げの時に定められた音響信号を使う規則が記載されています。

旗はただ上げれば良い訳ではないので、特に各旗の音響信号についての短音・長音・回数は、よく確認しましょう。

選手側からすると、旗を視認することが基本です。

 

26 レースのスタート

(前略)音響信号の不発は、無視されなければならない。(後略)

 

基本的な信号旗は覚えるか、艇に国際信号旗のシールを貼る等して、意味をすぐに理解できるようにしておきましょう。

数字旗はなかなか全部は覚えられないです。私は自宅にこのようなものを飾っていますが、数字旗は1~3しか覚えていません・・・。

 

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余談ですが、気合の入った試合では、ネイルをセール番号にしたりしていた頃もありました。

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さて、今回のルール改正で、追加されたレース信号旗が3つあります。

特に運営艇や支援艇で活動される方は、確認しましょう。

 

オレンジ旗:この旗を掲げたポールは、スタート・ラインの一端である。

青色旗:この旗を掲げたポールは、フィニッシュ・ラインの一端である。

(青色は以前からもあったのですが、「青色旗またはシェイプ」だったのが、「旗」になりました。)

 

上記二つは「レースの帆走>①スタート」の回にも記載しています。今までの運営の運用から変更となる運営チームもあるかもしれませんので、要注意です。

 

V旗:安全指示のための通信チャンネルを聴取すること。(規則37参照)

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37 捜索と救助の指示

レース委員会が音響信号1声とともに、V旗を掲揚した場合、すべての艇、運営艇、支援艇は、可能な場合には、捜索と救助の指示を受けるためにレース委員会の通信チャンネルを聴取しなければならない

 

今までは、海上でレース中に何か事故が起こっていても、それを他艇が知る術が無かったと思います。このV旗のルール化により、運営側が周囲に対して喚起をすることが出来るようになりました。

無線を持っている艇に乗る場合は、V旗があがったら、他人事と無視してはだめというだけでなく、無線を聴取するという能動的な行動を起こさなければならないということです。無線を持っていなかった場合も、捜索と救助の要請には、可能な限り応じてください。

 

上記は、「第1章基本規則 規則1」を、全員が遵守し、また円滑に捜索・救助が行われるように動くことを規則にしている内容ということですね。

 

1 安全

1.1 危険な状態にあるものを助けること

艇、競技者、または支援者は、危険な状態にある人員または船舶に対して、可能な限りのあらゆる救助をしなければならない。

 

 

また、安全に関してのレース信号としては、使われることが少なくて見たことがない方もいるかもしれないので、Y旗も紹介しておきます。

Y旗:個人用浮揚用具を着用せよ。(規則40参照)

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 40 個人用浮揚用具

40.1 原則

規則40.2により規則40.1が適用された場合、各競技者は衣服または個人装備を一時的に替えたり整えたりする間を除き、個人用浮揚用具を着用していなければならない。ウェット・スーツとドライ・スーツは個人用浮揚用具ではない。

40.2 規則40.1が適用される場合

規則40.1は以下の場合に適用される。

(a) 予告信号前または同時にY旗が音響1声と共に水上で掲揚された場合には、そのレース中

(b) Y旗が音響1声と共に陸上で掲揚された場合には、その日の水上にいる間は常時

ただし、規則40.1は、レース公示または帆走指示書に記載された場合、適用される。

 

日本では、国土交通省の省令改正により、2018年2月から小型船舶の同乗者全員のライフジャケット(桜マーク付き)着用の義務化が適用されました

https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_fr6_000018.html

従って、日本国内で活動される方は、通常はY旗に関係なく海上ではライフジャケットを着用していると思います。

海外のレースに出て、突然Y旗が揚がって意味が分からない~となるかもしれませんが、いつもと同じにしていれば大丈夫です。

なお、国土交通省令に規定されているライフジャケット「桜マーク付き」については、例外措置があります。

https://www.jsaf.or.jp/fukyuu/2020/04g.lifejacket%20gimuka.pdf

 

レース信号の話と違う方に行ってしまいましたが、ライフジャケットについて2018年当時からJSAFをはじめ、各クラブ・マリーナや供給側を含めてルール徹底に奔走いただいたおかげで、現在はそんなに混乱がない運用になっているかと思います。

 

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というところで、今回までで、選手が海上で遭遇するルールの基本的なところは紹介できたと思います。

「ここをもう少し詳しく。」等があれば、その回のところにコメントいただけると嬉しいです。

 

 

レースの帆走>クイズ解説

前回のクイズの回答と解説をしたいと思います。

 

QUIZ

下図A艇・B艇それぞれはスタートしたか?

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ANSWER

これはコースの帆走の糸の原理ですね。

A艇はスタートしました。

以前書いたフィニッシュのところ(28.1(b))もそうですが、航跡を示す糸が各マークを定められた側で通過する場合に限り、マークの周りを余分に回転することを禁止されていません。また、このように2つのスタートマークを定められた側で通過している場合は、糸がその後にマークの定められていない側で通過していても違反にはなりません。

B艇はこの図のまま次のマークに向かってしまうと、NSCとなります。スタートが閉じる前に再度スタートラインを通過しなおす必要があります。

本クイズはケースブックから引用しました。(ケース90)

 

QUIZ

艇がフィニッシュ・マークに接触する場合、艇はその得点ペナルティーを履行した後、再びコース・ サイドからフィニッシュ・ラインを横切る必要があるか?

ANSWER

再度フィニッシュラインを横切る必要はないです。 得点ペナルティー1回転ペナルティー2回転ペナルティーに代わるものですから、艇が最初にコー ス・サイドからフィニッシュ・ラインを横切った時がフィニッシュとなります。

本クイズはWorld Sailing Racing Rules Question and Answer Serviceから引用しました。(Q&A 2018.012

 

いかがでしたでしょうか。ここまで書いたルールを理解できていれば、簡単だったと思います。他にもややこしいケースや判断に悩むケースがたくさんあるので、こういうものの少しずつ紹介していければと思います。こういう時は?というものがあれば、お寄せください。考えても、わからないことはJSAFやWorld Sailingに質問してみたいと思います。

 

レースの帆走>③フィニッシュ~スコアリング~

フィニッシュといえば、順位です。成績です。スコアリングです。今回も運営寄りの内容ですが、最後にまとめクイズもありますよ。

 

35 レース・タイム・リミットと得点

1艇がスタートし、コースの帆走をして、タイム・リミットがある場合にはそのレースのタイム・リミット内のフィニッシュした場合には、レースが中止された場合を除き、フィニッシュしたすべての艇はフィニッシュの順位に従って得点が記録されなければならない。(後略)

 

90.3 得点

(a) レース委員会は、レース公示または帆走指示書に別の方式が明記されている場合を除き、付則Aの規定に従って、レースまたはシリーズの得点を記録しなければならない。

 

ということで、スコアリングについては、付則Aに記載されています。

 

A4 得点方法

レース公示または帆走指示書にて他の方式が規程されている場合を除き、この『低得点方式』が適用される。(後略

 

低得点方式は、1位が1点、2位が2、以降の順位については1点ずつが加わる形式です。

 

ただ、こんなことはあり得ます。

 

A6 他艇の順位と得点の変更

A6.1 ある艇がレースで失格とされた場合、またはフィニッシュ後リタイアした場合には、その艇の後にフィニッシュしたそれぞれの艇の順位を1つずつ繰り上げなければならない。

 

よく「英語がついた~」という略語と意味は以下です。

 

A10 得点記録の略語

DNC スタートしなかった。スタートエリアに来なかった。Did not come to the starting area

DNS スタートしなかった(DNCOCS以外)。Did not start

OCS スタートしなかった。スタート信号のときにスタート・ラインのコース・サイドにいてスタートしなかった、または規則30.1に違反した。On the course side of the starting line~

ZFP 規則30.2に基づく20%ペナルティーZ flag penalty

UFD 規則30.3に基づく失格。U flag disqualification

BFD 規則30.4に基づく失格。B flag disqualification

SCP 得点ペナルティーが適用された。Scoring Penalty applied

NSC コースの帆走をしなかった。Did not sail the course

DNF フィニッシュしなかった。Did not finish

RET リタイアした。Retired

DSQ 失格。Disqualification

DNE 除外できない失格。Disqualification that is not excludable

RDG 救済が与えられた。Redress given
DPI
 裁量ペナルティーが課された。Discretionary penalty imposed

 

 今回のルール改正でNSCが追加され、コースの帆走をしなかった艇も審問無し失格が出来るようになりました

そして、各得点について以下の規則に則って記録されます。

 

A5 レース委員会により決定される得点

(以下、一部意訳あり)

A5.1 DNC/DNS/OCS/NSC/DNF/ZFD/UFD/BFD/78.2違反/RET/SCPの艇には、レース委員会によって審問なしに、それぞれに応じた得点が記録されなければならない。(後略)

 

A5.2 DNC/DNS/OCS/NSC/DNF/RET/ZFD/UFD/BFD/DSQ/DNEの艇には、シリーズに参加した艇の数より1多いフィニッシュ順位に対する得点が記録されなければらならない。(後略)

 

A5.3 レース公示または帆走指示書に規則A5.3の適用を記載する場合、規則A5.2は次のように変更する。スタート・エリアに来たがDNS/OCS/NSC/DNF/RET/DSQ/DNEの艇には、スタート・エリアに来なかった艇の数より1多いフィニッシュ順位に対する得点が記録されなければならない。また、スタートエリアに来なかった艇には、シリーズに参加した艇の数より1多いフィニッシュ順位に対する得点が記録されなければならない。

 

A5.3が適用されるとはレース委員会の方針により、得点計算が異なる場合がありますので、スコアリングには注意が必要ですね。

 

さて、ここまでがレースの帆走(①スタート②コースの帆走③フィニッシュ)でした。

そこで、レースの帆走につて、まとめのクイズ2問です。

 

QUIZ

下図A艇・B艇それぞれはスタートしたか?

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QUIZ2

得点ペナルティーが採用されるレースにおいて、艇がフィニッシュ・マークに接触する場合、艇はその得点ペナルティーを履行した後、再びコース・ サイドからフィニッシュ・ラインを横切る必要があるか?

 

回答および解説は次回!

レースの帆走>③フィニッシュ~コース短縮~

前々回のコース帆走~レース委員会ができること~で書いた最後の一つ、コース短縮について書いていきます。

 

まず、コース短縮できる時とは?が、以下。

(再掲)

32 スタート後の短縮または中止

32.1 スタート信号後、レース委員会は以下のいずれかの理由により、その状況に応じて、コースを短縮する、またはレースを中止することができる。

(a) 悪天候

(b) どの艇もタイム・リミット内にフィニッシュできそうもない不十分な風。

(c) マークが紛失している、または所定の位置にないこと。

(d) 競技の安全または公正に直接影響するその他の理由。

加えて、レース委員会は予定されたその他のレースを実施するためにコースを短縮することができる。(後略)

 

コース短縮で多いケースは(b)でしょうか。

 

手順は、

コースの短縮SShortening)旗と共に、反復音響信号を発する

ですが、ラインについては決まりがあります。

 

32.2 レース委員会が、コース短縮に信号を発する場合には、フィニッシュ・ラインは、以下のいずれかでなければならない。

(a) 回航マークにおいては、その回航マークS旗を掲げたポールとの間。

(b) コース上、艇が横切らなければならないと定められているライン。

(c) ゲートにおいては、ゲート・マークの間。

コース短縮は、最初の艇がフィニッシュ・ラインを横切る前に信号を発しなければならない。

 

書いてある通りのことなのですが、コース変更と併用されることもあります。その場合は、前のマークでC旗+音響信号で変更を示して、フィニッシュラインを作ってS旗+音響信号でフィニッシュという忙しいこともありますので、慣れていない運営チームの場合には、実施の前にチームメンバーとやり方を確認して出来ることを確認してからの決断にしましょう。

 

短縮以外も含めて、レース運営することで一番考えなければならないのは、安全第一はもちろんですが、やっぱり、選手ファーストかどうか、その判断が公平公正かどうか。

レース運営はどんなに想定しても想定外の突発的なことが起きてしまうことがあります。RRS片手に運営することもあれば、運営どころかレスキューに走り回ることもあります。なかなか表舞台には出てこない運営チームですが、運営なくしてレースは成立しません。私も選手として各地でレースに参加させていただいていて、各地の素晴らしい運営によって楽しいセーリングライフが送れていることを本当に感謝しています。

それでも、選手ファーストなのが競技です。

私も時には運営する側の一員として参加します。運営チームもレベルアップして選手の活躍に貢献したいと思っています。

 

レースの帆走>③フィニッシュ

レースの帆走は、スタートして、コースの帆走して、そしてフィニッシュ。

予想以上に回を費やしましたが、やっと、フィニッシュまで辿り着きました~。

 

さて、フィニッシュとは。

 

定義 フィニッシュ

スタート後、艇体の一部がコース・サイドからフィニッシュ・ラインを横切るとき、艇はフィニッシュするという。(後略)

 

つまり、ちゃんとスタートしてコースの帆走してフィニッシュラインを切れば、フィニッシュです。簡単ですね。

ちなみに、日本語で「横切る」、英語では「cross」という言葉が使われていますが、ライン上で一瞬でもクロスすれば、通り過ぎなくても大丈夫です。

(再掲)

28 レースの帆走

28.1 (前略)フィニッシュ後は、艇はフィニッシュ・ラインを完全に横切る必要はない。

 

ちなみに、以前の回にも書きましたが、スタートと同様にフィニッシュでも今回のルール改正で変更がありました。

横切るべき部分が「艇体、乗員、装備の一部」の横切ることだったのが、「艇体(Hull)」になったので、スピンのある艇でダウンウィンドフィニッシュの際にスピンを飛ばして一秒でもフィニッシュ時間を稼ごうとしていた方は、今後はその行為は無意味になりますよ。

 

定義 フィニッシュ の続きです。

 

(前略)ただし、フィニッシュ・ラインを横切った後に、次のいずれかを行う場合には、艇はフィニッシュしていない。

(a) 規則44.2に基づきペナルティーを履行する場合。

(b) フィニッシュ・ラインで行った、コースの帆走に関する誤りを正す場合。

(c) コースの帆走を続ける場合。

 

はい、(a)(b)(c)は例外ということです。

まず、(a)について。

 

44.2 1回転と2回転ペナルティー

(前略)

艇はフィニッシュ・ラインまたはその近くでペナルティーを履行する場合、フィニッシュする前にその艇の艇体が完全にフィニッシュ・ラインのコースサイドになければならない。

 

例えばフィニッシュ・マークにマークタッチしてしまって1回転ペナルティーを履行する場合や、フィニッシュ争いで非航路権艇なのに航路権艇に突っ込んでしまって抗議されて2回転ペナルティーを履行する場合等、フィニッシュのところでの回転ペナルティーをどうするかということです。

回転ペナルティーの履行のタイミングは、

 

44.2 (前略)インシデントの後できるだけ早く他艇から十分離れた後、(後略)

 

となっていますので、状況によってはフィニッシュラインを切ってからペナルティー履行することもあり得ます。

その場合は、フィニッシュラインを横切った後でもペナルティー履行をすることができ、またその場合はペナルティー履行後に再度フィニッシュラインを切らなければフィニッシュしたことになりません。その際、艇の一部だけでなく艇の全体がコースサイドに戻ってから、再度フィニッシュラインを横切る必要があります。

 

次、(b)について。

RRSクイズによく出てくる図の構図をお借りします。

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クイズでは「レース艇はこの図のどこでフィニッシュしたか?」という問題ですが、フィニッシュラインに向かっていても、潮の流れでなかなか入れず、なんとか頑張ってフィニッシュするというものです。クイズの解説としてはフィニッシュ1はラインを逆から横切っているのでNGで、フィニッシュ2のところはそれをやり直そうとしているところで、やり直して回ってフィニッシュしたのが3の位置ということになりますが、この13(b)に該当するところですね。

 

最後に、(c)について。

これには2パターンあると思います。

1つ目は、コース設定上、フィニッシュ・ラインがコース上に設定してある場合。

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こういう場合はSIでフィニッシュ時以外はフィニッシュラインを通らないように指示している場合もありますが、物理的に通れてしまいますので、フィニッシュ・ラインを横切る可能性が発生しますが、コースの帆走を続けるのであればフィニッシュにならないという話です。

 

2つ目は、フィニッシュした後にコースの誤りを正す場合です。

 

28.2 艇は、フィニッシュするためにフィニッシュ・ラインを横切っていない場合に限り、コースの帆走の誤りを正すことができる。

 

フィニッシュするために横切らなかったことをどのように立証するか?はおいておいて、フィニッシュ・ラインを切った後にコースの誤りを直して再度フィニッシュ・ラインを切ることでフィニッシュとなり得るということです。

(但し、もちろん時間の制限がある場合は、その制限内でやり直せないとDNFとなってしまいます。)

 

なお、フィニッシュは横切る(cross)ところでフィニッシュと前述しましたが、その後にフィニッシュ・ラインから離れなければなりません。

 

定義 レース中

艇がその準備信号から、フィニッシュしてフィニッシュ・ラインとフィニッシュ・マークを離れるまで、もしくはリタイアするまで、またはレース委員会がゼネラル・リコール、延期、もしくは中止の信号を発するまで、その艇はレース中であるという。

 

フィニッシュした後に潮で流されてマークタッチをした場合は、規則31違反となりますので気を付けましょう。

 

(再掲)

31 マークとの接触

レース中、艇は、次のいずれかのマーク接触してはならない。

スタート前のスタート・マーク

・帆走中のコースのレグの起点、境界または終点となるマーク

フィニッシュした後のフィニッシュ・マーク ←ここ!フィニッシュ後の1回転ペナルティー履行もありえます。その場合は、再度フィニッシュすること。

 

レースの帆走>②コースの帆走~レース委員会ができること~

さて、今回はコース帆走中にレース委員会が出来ることについてまとめたいと思います。

前回書いた通り、出来ることは以下の4つで、それぞれの条件も書いておきます。

コースの短縮32.1(a)(b)(c)(d)に該当する場合+予定されたその他のレースを実施するため

レースの中止32.1(a)(b)(c)(d)に該当する場合

マークの変更:すべての艇に対して、そのレグを帆走し始める前に信号で知らせることができる場合

マークの代替32.1(c)に該当する場合

 

(再掲)

32.1 (前略)

(a)悪天候

(b)どの艇もタイム・リミット内にフィニッシュできそうもない不十分な風。

(c)マークが紛失している、または所定の位置にないこと。

(d)競技の安全または公正に直接影響するその他の理由。

(後略)

 

短縮と中止の信号は以下です。

コースの短縮:音響2声と共にS旗を掲揚

レースの中止:音響3声と共にN旗、H旗の上にN旗、またはA旗の上にN旗を掲揚

なお、レースの中止はその時点でレース終了となるので、その後については状況に応じた指示出しNNoRace中止)旗か、N旗と組み合わせのH(とりあえずHarbour Back)旗か、A(今日はAbandanやめ)旗を掲揚します。

特に前線接近での中止の時等、N旗だけだとそこに留まる艇が出てしまう可能性があるので、NH旗/NA旗で速やかにハーバーバックさせます。

コースの短縮はすなわちフィニッシュになるので、その手順はフィニッシュの回に記載したいと思います。

 

次に、マークの変更と代替についてです。

マークの変更:反復音響とともにCChange)旗掲揚+α

マークの代替MMark)旗を掲揚したもので代替し、反復音響信号を発する

 

マークの変更「+α」の部分は、新しい次のマークの方角と距離の掲示ですが、このような規則となっています。

33 コースの次のレグの変更

(前略)

(a) レグの方向を変更する場合には、反復音響と共にC旗を掲揚し、さらに次のうちの1つまたは両方を掲示しなければならない。

 (1) 新しいコンパス方位。

 (2) スターボード側への変更の場合は緑色の三角形、ポート側への変更の場合は赤色の長方形。

(b) レグの長さを変更する場合には、反復音響とともにC旗を掲揚し、さらに、距離を短くする場合には「-」を、距離を長くする場合には「+」を掲揚しなければならない。

(c) 変更したレグに続くレグは、コースの形を維持するためには、それ以上の信号なしに変更することができる。

 

コンパクトなレース運営をしている場合、コンパス方位の角度を数字で掲示することが難しい場合もあると思いますが、その場合は、緑の三角と赤の長方形のボードを用意しておけば、マーク変更に対応できます。また、マーク変更時は距離の変更をする可能性も高いので、プラスとマイナスを大きく描いたボードも用意しておきましょう。

 

レース運営は単一艇種の単独スタートとは限らず、複数艇種による単独/複数スタートの可能性があるので、レース艇がコースを帆走している時の全体像をしっかりと把握する必要があります。後続スタートのTOP艇が先発スタート艇団に紛れ込んだり、先発スタートの周回遅れ艇が後続スタート艇団に吸収されてしまったりすると、マークの変更をするタイミングが難しかったりします。風の変化や海況に対して敏感になり、判断基準を明確にして公正公平なレース運営が出来ると良いと思います。

 

レースの帆走>②コースの帆走

今回は、「レースの帆走」を構成する以下の3つの部分の内、「コースの帆走」についての話です。

レースの帆走=スタート+コースの帆走+フィニッシュ

 

(再掲)

定義 コースの帆走

艇がコースの帆走を行うとは、プレスタート・サイドからスタートするためにスタート・ラインに近づき始めた時から、フィニッシュするまでの艇の航跡を示す糸をピンと張った場合に、次のようになっていることをいう。

(a)そのレースのコースにある各マークを定められた側および正しい順序で通過。

(b)帆走指示書で回航マークと定められた各マークに触れること。

(c)ゲート・マークの間を、その前のマークからのコースの方向で通過。

 

28.2 艇はフィニッシュするためにフィニッシュ・ラインを横切っていない場合に限り、コースの帆走の誤りを正すことができる。

 

以前の回で糸が絡まったり結んでしまってもOKと書いた、糸の原理と呼ばれるものです。

要は、選手は帆走指示書に記載の通りのコースをスタートからフィニッシュまで帆走し、マークを端折ったり、マーク回航の方向を間違えずにフィニッシュすればOKです。間違えたら直せるし。簡単ですね。

 

でも、こんな簡単なことが、信じられないことに、出来なかったことが私はあります・・・。(しかも、結構最近。)

コースの帆走中に、大きく風向が変わり、自分がどのレグを帆走しているのかわからなくなりました。正確には分からなくなっていたのではなく、誰もいないところを帆走し、トップか?と喜んで我が道を信じて帆走していたのです。結果、ただ間違えていただけですが、間違えていることが分かった時、一体いつからどこから間違えたのか分からなくて、爆笑しかできませんでした。コースの誤りを直そうとしましたが、どこから直せばよいかわからず、リタイアするという失態ww

 

こんなことは多くはないハズですが、可能性があることは確かです。スタート前にコースを確認すると思いますが、スタートの回にも記載した通り、コース信号は予告信号まで音響信号なく変更される可能性があります。私が経験したレガッタで一番多かった設定コース数は6パターンだったと記憶しています。風向風速等によって採用される可能性のあるコースがそれだけあるので、コース信号とコースを覚えて(記憶は不安なのでデッキに貼っておく)、毎レース確認して(デッキにメモる)、出走してました。確認せずにコース帆走して、トップ回航で泡を食ったりしないようにしてくださいね。トップではなくても、先行艇が間違っていることもあるので、マーク回航ごとに指差し確認すると安心。(ちなみに上述のコースを間違えたレースは、指差し確認していたのに間違えましたけど。)

 

従って、レース運営する場合は、スタートさせたらフィニッシュまでお弁当食べて待つ、なんてこと、あってもいいのですが、よくレース海面を見ておいてください。私のような間抜けなセーラーは多くないとはいえ、コースの帆走をしていない艇がフィニッシュするかもしれないからです。(各運営ボート間の連携も大事!)

※もちろんそれ以外のこともありますから、交代でもいいので誰かは海面確認していること。安全確認(沈艇ウォッチ等)・マーク位置確認等々。

 

スタート後のコース帆走中に運営チームが出来ることは以下のようなことがあります。

 

32 スタート後の短縮または中止

32.1 スタート信号後、レース委員会は以下のいずれかの理由により、その状況に応じて、コースを短縮する、またはレースを中止することができる。

(a)悪天候

(b)どの艇もタイム・リミット内にフィニッシュできそうもない不十分な風。

(c)マークが紛失している、または所定の位置にないこと。

(d)競技の安全または公正に直接影響するその他の理由。

加えて、レース委員会は予定されたその他のレースを実施するためにコースを短縮することができる。(後略)

 

33 コースの次のレグの変更

艇がレース中に、レース委員会は、次のマーク(またはフィニッシュ・ライン)の位置を変更し、すべての艇に対し、そのレグを帆走し始める前に信号で知らせることによって、回航マークまたはゲートで始まるコースのレグを変更することができる。次のマークはその時点でその位置にある必要はない。(後略)

 

コースの短縮

レースの中止

マークの変更

この3つを出来るということですね。

そして32.1(c)に該当する場合には、

マークの代替

をすることも出来ます。

この計4つのやり方は、次回にまとめたいと思います。

 

レースの帆走>①スタート~リコールとペナルティー(後編)

なんだか酷いタイトルですね・・・(笑)

後編は、

30.1 I旗規則

30.2 Z旗規則

30.3 U旗規則

30.4 黒色旗規則

について、整理したいと思います。

 

I旗規則とそれ以外の大きな違いは、いてはいけない場所の範囲です。

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前回も書いた通り、上図の通り、I旗規則はスタートラインの延長線上のコース・サイドもNG範囲です。I旗規則適用の場合の運営視点では、どこかに行ってて帰って来る艇、本部船の上側で溜まっていてはみ出している艇も、ウォッチする必要があります。

選手の場合、スタートラインの中央付近で出てしまった場合は、かなり遠くを回って戻る必要があります。ラインの端で出た場合と、中央で出た場合では、違反の解消に要する距離・時間が異なります。

さらにこれを運営視点で見ると、特にライン中央で出てしまった艇がどちらのエンドを回るか、追い続ける必要があります。アウターエンドにも運営ボートがいて、解消の確認が出来る体制で規則適用することは必須でしょう。

 

そして、Z旗・U旗・黒色旗規則の、NG範囲はスタート・ラインの両端と最初のマークでつくられる三角形です。

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そして、Z旗規則とU旗・黒色旗規則の違いは、ペナルティーの種類です。

Z旗規則違反は得点ペナルティーで、U旗・黒色旗規則違反は失格です。

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Z旗から。

 

30.2 Z旗規則

(前略)レースが、再スタートまたは再レースとなったとしても、その艇はペナルティーを課される。

 

→つまり、違反となったスタートがゼネラル・リコールで、次のスタートが成功したとしても、ペナルティーが加算されます。

 

(続き)ただし、レースが延期またはスタート前に中止された場合には、ペナルティーは課されない。

 

→これは、スタートまでに一分前に出てしまっていて、本来であれば違反であっても、スタートしなければペナルティーはチャラとなります。前回も書いた通り、運営側が留意すべき重要な点ですね。スタートさせてしまったら、例え運営の手違いがあっても、ペナルティーはペナルティーになってしまいます。

 

(続き)ペナルティーを課された艇がその後の同じレースのスタート前に同様に違反を特定された場合、その艇は、さらに20%の『得点ペナルティー』を受けなければならない。

 

→違反となったスタートがゼネラル・リコールで、次のスタートでもまた違反したら、20%が追加加算されます。

 

44.3 得点ペナルティー

(c) 『得点ペナルティー』を履行した艇のレースの得点は、(中略)ペナルティーを受けない場合の順位より悪い順位の得点としなければならない。『フィニッシュしなかった(DNF)』に対する得点の20%の整数(小数点以下第1位を四捨五入)としなければならない。(後略)ただし、そのペナルティーにより艇が『フィニッシュしなかった(DNF)』より悪い得点を与えられることはない。

 

Z旗違反となった場合、自艇の順位のスコアにDNFスコアの20%が加算されます。

 

 

そして、U旗と黒色旗の違いは以下の通りです。

 

30.3 U旗規則

(前略)ただしレースが再スタートまたは再レースとなった場合は、失格としてはならない。

  

30.4 黒色旗規則

(前略)レースが再スタートまたは再レースになったとしても、その艇は審問なしに失格とされなければならない。(後略)

 

ということで、U旗はそのスタートがチャラになれば失格もチャラとなりますが、黒色旗は一度失格になったら、その履歴は消せません。

 

以下、30.4黒色旗規則の続きです。

 

(続き)ただし、レースが延期またはスタート信号前に中止された場合には、失格としてはならない。

 

→ここも、前回およびZ旗規則のところでも書いた通り、運営側が留意すべき重要な点です。スタートさせてしまったら、例え運営の手違いがあっても、失格艇は失格艇になってしまいます。

 

(続き)ゼネラル・リコール信号が発せられた場合、またはレースがスタート信号後中止となった場合には、レース委員会はその艇のセール番号を、そのレースの次の予告信号前に掲示しなければならず、レースが再スタートまたは再レースとなった場合には、その艇はそのレースで帆走してはならない。

 

→これも運営側が留意すべき点ですね。黒色旗掲揚をするということは、失格艇がでたら掲示するということです。また、セール番号を掲示することになっているので、リコール番号制を採用する大会で、ゼネラル・リコールでの黒色旗違反艇掲示をリコール番号で実施する時はNORまたはSIで変更するようにします。(86 競技規則の変更参照)

 

(続き)帆走した場合には、その艇の失格はシリーズ得点を計算するときに除外してはならない。

 

→この部分は選手が注意です。失格になったとわかって出走すると、得点はDNE(除外できない失格)となります。

 

それから、スタート規則違反があったとしてもスタートしてしまったら、規則違反艇も違反をしていない艇と一緒に帆走します。レース中は排除されません。では、そのレース中に違反艇と違反をしていない艇との間にケースがあった場合、どうなるでしょうか。

これは、通常の審問手順で審問が行われます。が、もちろんスタート規則違反が消えるわけではありません。想像するだけで厄介なことに巻き込んだり、巻き込まれたりしそうですね・・・。

いずれにしても、こういうこともあり得るのだという話です。

 

レースの帆走>①スタート~リコールとペナルティー(前編)

リコールとスタートペナルティーも言わずもがななルールですが、大事なところですので確認しておきます。

 

29 リコール

リコールには2種類あります。

29.1 個別リコール

29.2 ゼネラル・リコール

 

30 スタートのペナルティー

スタートのペナルティーは4つあります。

30.1 I旗規則

30.2 Z旗規則

30.3 U旗規則

30.4 黒色旗規則

 

本部船では、スタートラインを読む人と旗の上げ下げする人が違うので、スタートラインを読む人はスタートについてを明確に伝えて、正しい視覚信号と音響信号が発せられるようにしましょう。

 

29.1 個別リコール

スタート信号時に、艇体がスタート・ラインのコース・サイドにある場合、または艇が規則30.1に従わなければならない場合、レース委員会は速やかに音響1声とともにX旗を掲揚しなければならない。(中略)規則29.230.3または30.4が適用される場合には、この規則は適用されない。

→準備信号P旗でスタート時にリコールしている艇がいた場合、または準備信号がI旗で1分前からスタート時までに一度でもコース・サイドに出ていた艇がいた場合、スタート時にX旗を掲揚します。これは、スタート時にはプレスタート・サイドに戻っていたとしてもX旗掲揚です。そして準備信号がZ旗でもスタート時点でコース・サイドにいる艇がいた場合は、X旗を掲揚するということになります。

 

29.1 (前略)これらの艇の艇体がスタート・ラインまたはそのどちらかの延長線のプレスタート・サイドの完全に戻るまで、またこれらの艇に規則30.1が適用されている場合には、それに従うまで、X旗は掲揚しておかなければならない。ただし、X旗の掲揚はスタート信号後4分以内か、または次のスタート信号の1分前までの、いずれか早い方とする。(後略)

→準備信号P旗の場合は、リコールした艇のすべてが完全に戻る(艇体の全部がプレスタート・サイドまで戻る)のを確認したら、X旗を降ろします。I旗規則を採用した場合、スタートを見る目が複数必要になる場合があります。1分前に出ていた艇が戻ったか?5秒前に出ていた艇が戻ったか?しかもそれぞれを両エンドの外側まで見て追わなければならないからです。

 

30.1 I旗規則

I旗が掲揚され、スタート信号前の1分間に、艇体がスタート・ラインまたはそのどちらかの延長線のコース・サイドにある場合には、スタートする前に、その艇の艇体がスタート・ラインの延長線を横切り、プレスタート・サイドまで完全に戻らなければならない。

I旗規則はスタート・ラインの延長上まで及ぶので、本部船の後ろ側でコース・サイドにいる艇がいた場合もX旗をあげなければなりません。一見クリアスタートでもX旗があがることもあり、選手も混乱しそうです。何より運営が大変になる規則ですね、最近はあまり見かけません。

 

29.2 ゼネラル・リコール

スタート信号時に、次のいずれかの場合、レース委員会はゼネラル・リコール信号(音響2声と共に第1代表旗を掲揚)を発することができる。

・レース委員会が、スタート・ラインのコース・サイドにいる艇、または規則30の適用を受ける艇を特定できない場合

・スタートの手順に誤りがあった場合

リコールされたクラスの新しいスタートの予告信号は、第1代表旗降下(音響1声)の1分後に発せられなければならず、これに続くクラスのスタートは、この新しいスタートに続けなければならない。

→最初の一艇はわかっても、あとからあとから出てくる艇が特定できない・・となったら、ゼネリコ。スタート信号前までにスタート手順に誤りがあった場合は、AP旗を掲揚して延期ですが、スタートの瞬間に誤りがあった場合は、ゼネリコでやり直しです。

そして、これらにおいて注意すべきは、黒色旗規則適用でゼネラル・リコールになった場合です。

 

30.4 黒色旗規則

黒色旗が掲揚された場合には、スタート信号の1分間に、艇体がスタート・ラインの両端と最初のマークでつくられる三角形の中にあってはならない。艇がこの規則に違反して、特定された場合には、レースが再スタートまたは再レースとなったとしても、その艇は審問なしに失格とされなければならない。ただし、レースが延期またはスタート信号前に中止された場合には、失格としてはならない。ゼネラル・リコール信号が発せられた場合、またはレースがスタート信号後中止となった場合には、レース委員会はその艇のセール番号を、そのレースの次の予告信号前に掲示しなければならず、レースが再スタートまたは再レースとなった場合には、その艇はそのレースで帆走してはならない。(後略)

→とにかく、一度でもブラックを読まれてしまったら、選手はアウトとなります。唯一失格にならないのは、読まれたとしてもそのスタート前の延期か中止だけです。スタート1分前でブラックを読まれたとしても、AP旗かN旗があがれば、失格にならないです。運営からすると、途中まではブラックを読んでいても、スタート直前で延期か中止となった場合は、失格艇の掲示をしないということです。

が、ブラックを読まれたスタートがゼネラル・リコールとなっても失格となります。黒色旗でゼネリコの場合は、失格艇が掲示されますので、次のスタートは参加できません。運営からすると、運営面の手順の誤りであっても、ゼネラル・リコールでスタートのやり直しをする場合は、失格艇を出してしまう可能性があります。手順の誤りに気付いた時、ゼネリコにしてやり直せばいいや。ではなく、すぐに延期できるよう、ギリギリまでAP旗をあげられるようにしておきましょう。

そして、ブラックを読まれて失格となった艇は、自分が参加しないゼネリコ後のスタートがスタート前の延期・中止となったとしても、またスタートした後に中止になったとしても、いずれにしても次のレースは帆走できません。もちろん、日をまたぐこともあるでしょう。前日の最終レースでブラックで読まれ、そのレースが途中で中止になって翌朝に再レースとなる場合、これに出ると失格です。

 

30.4 (前略)帆走した場合には、その艇の失格は、シリーズ得点を計算するときに除外してはならない。

翌朝になって気分一新!とうっかり出走してしまうと、除外できない得点となりますので注意しましょう。

 

運営目線の話に戻り、スタートラインを見る時は、アウターエンドのマーク/ポールとスタートフラッグポールの延長線上から視認します。ポールが太い場合は延長線かつコース・サイド側から読むと、「明確なリコール艇」を確認することができます。

リコールの信号旗(X旗、第1代表旗)は、スタート信号から12秒以内には掲揚しましょう。

 

ゼネラル・リコールを繰り返してしまいなかなかスタートがうまくいかない場合ってあります。それは、選手に因ることもあるかもしれませんが、繰り返す場合には運営に問題があると考えましょう。艇の特性やフリートの特徴、潮や風の影響も加味した適切な角度・長さのスタート・ラインを設定できているか?リコール艇の特定ができない長さのスタート・ラインを設定して、ゼネラル・リコールを発していないか?等々。

そして、うまくいかないからと、I旗規則や黒色旗規則を安易に使うと、より厄介なことになる場合もあるということです。

 

レース運営の手順はレースマネジメントマニュアルに標準化されています。

本ブログは現時点で最新のこちらのRMMを参考にしています。

https://www.sailing.org/tools/documents/RaceManagementManualJuly2019-[25256].pdf

 

レースの帆走>①スタート

前回記載の通り、RRSでは

レースの帆走=スタート+コースの帆走+フィニッシュ

と整理されています。

「大会への参加」はまた違うカテゴリーになりますが、レースの帆走については、第3章にまとまっています。

 

レース運営に携わる際、この部分は基本的かつ重要なレース構成要素ですので、初めて/久しぶりにレース運営する方は特に、よくRRSを読んで心の準備・イメトレをして運営に臨みましょう。

ということで、今回からしばらくは主に運営向けの内容になりそうです。(もちろん、初めて/久ぶりレースに出る選手の参考にもなれば嬉しいです。)

 

まずはスタートの定義から。今回のルール改正での変更点がありますので、確認してください。

 

スタート スタート信号時またはスタート信号後、艇体がスタート・ラインのプレスタート・サイドに完全に入っていて、(中略)、艇体の一部がスタート・ラインをプレスタート・サイドからコース・サイドに向かって横切るとき、艇はスタートするという。

 

今回のルール改正でフィニッシュの定義と共に変更された箇所があります。今まではスタート/フィニッシュラインを切るのは「艇体、乗員、装備の一部」の横切ることだったのが、「艇体(Hull)」に統一されたこです。複数艇種が参加するレース等で、艇種によって基準が変わらないようにするために判定基準が変更になったのですが、「艇体(Hull)」ってどこ・・・という疑問もわきそうですね。現時点では、一応固定されたもの(固定されたウィング等)は艇体に含まれ、ブーム・セール・バウスプリット等動くものは「艇体(Hull)」ではない。という見解が出ています。

 

また、特に運営上のもう一つ重要な変更点として、今までは、本部船/フィニッシュボートにオレンジ旗/青色旗を掲揚していても、それは必ずしもマストに掲揚していない場合もあり、かつスタート/フィニッシュのラインはマストから見る。ということもあったかもしれません。

今回の改正でオレンジ旗/青色旗を揚げたポールがスタート/フィニッシュラインのエンドになることが明確化されましたので、ご注意ください。

 

オレンジ旗(音響信号無し)

この旗を掲げたポールは、スタート・ラインの一端である。

青色旗(音響信号無し)

この旗を掲げたポールは、フィニッシュ・ラインの一端である。

 

レース信号旗についてはRRS「レース信号旗」の一覧に載っています。

各旗について掲揚・降下時の音響信号が必要な場合もあり、

それについても一覧に記載がありますので、音響信号担当になったら、よく確認して信号旗の上げ下げをしましょう。

 

さて、スタートの話に戻ります。「スタート時」よく言う「スタートシークエンス」はいつからいつまででしょうか。レース中の定義を確認します。

 

レース中 艇がその準備信号から、フィニッシュしてフィニッシュ・ラインを離れるまで(中略)、その艇はレース中であるという。

 

ということで、「スタートシークエンス」は準備信号の4分前~スタートです。

予告信号~準備信号までは「レース中」ではありません。従って、レース中に適用される各種の規則は、準備信号以降に適用されます。

 

26 レースのスタート

レースは、次の信号を用いてスタートさせなければならない。計時は視覚信号から行わなければならない。音響信号の不発は無視されなければならない。

 

スタート信号旗を担当する場合、秒針が動くがごとく、旗の上げ下げをしましょう。

視覚信号のタイミングが曖昧だと、公正なレース運営と言えなくなってしまうので、要注意です。

 

スタートまでの時間は言わずもがなですが、一応。

5分(またはレース公示もしくは帆走指示書に記載の通り)=クラス旗掲揚=予告信号

4分=準備旗(P/I/Z/I+Z/U/黒色)掲揚=準備信号

1分=準備旗降下=1

0分=クラス旗降下=スタート信号

 

音響信号は「1声」です。1分前の音響信号は「長音1声」です。

1分前だけ、「ぷあ~~~」と鳴らさなければならないのですね。

しかし、海外のレースでは、音響信号がガンの場合もあります。記憶にないですが、スタート信号だけがガンだったのかもしれません。SIかブリーフィングで説明があったような気もしますが、いずれにしても視覚信号が重要ということですかね。

 

それから、以下にも注意しましょう。

規則27 スタート信号前におけるレース委員会のその他の行動 参照)

・帆走するコースの信号は予告信号前に発する。(別の方法による指示でもよい)

 &予告信号以前であれば、別のコースの信号に変えることが出来る。

 →選手は、予告信号時に示されているコースを確認すること。

・ライフジャケット着用を求める信号を発する場合は、予告信号以前に。(音響1声+Y旗掲揚)

・準備信号以前であれば、スタート・マークを移動することが出来る。

 →選手は、準備信号以前にスタートラインを確認した場合、その後に動かされていないかを確認すること。

・スタート信号前にレースを延期・または中止することが出来る。

 例)風向が大きく変わってしまったり、レースエリアに操業中の漁船が入ってきてしまったり・・・。 

 →延期・中止のやり方は以下です。

  延期:音響2声+回答旗(スタートを延期し、回答旗降下1分後に次の予告信号を発する)

     音響2声+H旗の上に回答旗(これ以降の信号は陸上で発する)

     音響2声+A旗の上に回答旗(本日はこれ以上レースを行わない)

  中止:音響3声+H旗の上にN旗(これ以降の信号は陸上で発する)

     音響3声+A旗の上にN旗(本日はこれ以上レースを行わない)

 

回答旗=APAnswering Pennant延期)を揚げる時は2声、NNoRace中止)旗を揚げる時は3声。

H(とりあえずHarbour Back)旗か、A(今日はAbandanやめ)旗。

回答旗とN旗は単独でも使えますし、組み合わせは意味を考えて使います。

 

ちなみに、スタート後に、つまりコースの帆走が始まってからスタート手順の誤りでレースを中止にすることもできます。その場合、以下の規則があります。

 

32 スタート後の短縮または中止

32.1 (前略)スタート手順の誤りを理由としてレースを中止することができる。ただし、1艇でもスタートし、コースの帆走をして、レース・タイム・リミット内にフィニッシュした後は、レース委員会は、そのレースまたはシリーズにおけるすべての艇への影響を考慮することなく、レースを中止してはならない。 

 

 

スタート延期と中止の違いは、スタートペナルティーが関わる重要なポイントなので、定義があることだけ確認して、次回に続く・・・。

 

延期 延期されたレースとは、予定されたスタートの前に延期されたものをいう。ただし、その後にスタートさせる、または中止することができる。

中止 レース委員会またはプロテスト委員会が中止したレースとは、無効となるが、再レースを行うことができるものをいう。

 

レースの帆走とコースの帆走

さて、前回、「コースの帆走の誤りを直せる時がありますよ」と書きましたので、こちらについても書いておきたいと思います。

 

Sail the course コースの帆走・・・定義

Sail the race レースの帆走・・・規則28

RRSにはこの二つのワードが出てきます。

???となりますので、整理したいと思います。

ちなみにこの部分は、今回のRRS改正で大幅に整理された箇所です。元々は規則にあった「コースの帆走:糸の原理」が定義に入り、関連ルール・規則が整理されました。

 

3章 レースの実施

 

その前に、規則28は第3章です。

3章はセーリングレースの基本が書いてあります。セーリングでの出走だけでなく、レース運営に携わる場合も、レース委員会がすべきことについてを含めて書かれていますので、第3章については確認しておきましょう。

 

話を元に戻します。絡み合っている2つのワードについてです。

 

28 レースの帆走

28.1 艇はスタートし、コースの帆走をし、フィニッシュしなければならない。その間、艇がいるレグの起点、境界または終点でないマークをどちらの側で通過してもよい。フィニッシュ後は、艇はフィニッシュ・ラインを完全に横切る必要はない。

 

定義 コースの帆走

艇がコースの帆走を行うとは、プレスタート・サイドからスタートするためにスタート・ラインに近づき始めた時から、フィニッシュするまでの艇の航跡を示す糸をピンと張った場合に、次のようになっていることをいう。

(a) そのレースのコースにある各マークを定められた側および正しい順序で通過。

(b) 帆走指示書で回航マークと定められた各マークに触れること。

(c) ゲート・マークの間を、その前のマークからのコースの方向で通過。

 

何々?何が違うの??となりますよね。

今回のルール改正の主旨は、「艇がレースを帆走するというのは3つのこと(スタート・コース帆走・フィニッシュ)をするということを明確にした」というわけで、レースの帆走を規則にし、この3つのことを並列に定義に入れることになったという経緯を知ると、整理されます。

 

レースの帆走=スタート+コースの帆走+フィニッシュ

 

コースの帆走含め、定義に書かれた3つのことについては、次回以降にもう少し書きたいと思います。

 

一応、前回違反解消の例外だと書いた「コースの帆走の誤りを正せる場合」だけ紹介しておきます。

 

28.2 艇はフィニッシュするためにフィニッシュ・ラインを横切っていない場合に限り、コースの帆走の誤りを正すことができる。

 

3章規則28.1違反でも、フィニッシュしようとしてフィニッシュ・ラインを切っていなければ、ライン通過後でも正すことが出来るということです。(今まではフィニッシュ・ラインを通過してしまったら正せなかったのです。)

ちょっと微妙なニュアンスですが、いずれにしてもコースの帆走を正しくできなかったことは、フィニッシュ・ラインを通過する前に気付く必要がありそうです。

 

ちなみに、その場合、航跡を示す糸をピンと張ると、絡まったり結ばったりするかもしれませんが、それは大丈夫です。誤ったところから正して全て回航しなおせば、糸に結び目が出来てしまってもOKです。

 

オン・ザ・ウォーター・ジャッジでのペナルティー履行

前回紹介したように、第2章違反はペナルティー履行によって解消が出来ますが、それ以外のルールでは、ペナルティー履行では違反を解消できません。つまり、2章(艇が出会った場合)以外の違反が判定された場合は、基本的には失格となります。これらは、言い訳出来ない規則違反ですよ、ということです。

なお、第3章にあるコースの帆走の誤りを直せる時のことや、付則Pを適用された場合の規則42違反といった例外もあります。

 

今回はこの「付則P適用レースで規則42(推進方法)違反と判定された場合のペナルティー履行」について書きたいと思います。

※付則P適用の規則42(OKなことの回NGなことの回)もご参照ください。

 

付則Pを確認してみます。

違反判定を艇に伝えるやり方はこちらです。

 

P1.2 規則P1.1 に基づき任命されたオブザーバーは、規則42に違反している艇を目撃した場合には、その艇がレース中でなくなったとしても、常識的にできるだけ早く、音響信号を発し、その艇に黄色旗を指し示し、セール番号を呼びかけることにより、ペナルティーを課すことができる。(後略)

 

付則P適用(オン・ザ・ウォーター・ジャッジ)の場合、通常はJURYボートが出艇します。艇の判別は艇長会議で伝えられると思います。白旗に「JURY」とかが多いのかな。

JURYボートかビューっと走ってきて、黄色の旗を示され、自分のセール番号を呼びかけられたら、それは違反判定されたということです。

「違反していない」と無視することはできません。何の違反かわからなかったら、後で確認するとして、まずはペナルティー履行をしましょう。

 

ペナルティー履行のやり方はこちらです。

 

P2 ペナルティー

P2.1 1回目のペナルティー

規則P1.2に基づく1回目のペナルティーを課された場合、艇のペナルティーは、規則44.2に基づく『2回転ペナルティー』でなければならない。ペナルティーを履行しない場合には、その艇は審問なしに失格とされなければならない。

P2.2 2回目のペナルティー

大会中に2回目のペナルティーを課された場合、艇は速やかにリタイアしなければならない。速やかにリタイアしない場合には、その艇は審問なしに失格とされなければならず、その得点は除外できない。

P2.3 3回目以降のペナルティー

艇は、大会中に3回目またはそれ以上のペナルティーを課された場合、速やかにそのレースをリタイアしなければならない。艇がリタイアした場合には、その艇は審問なしに失格とされなければならず、その得点は除外できない。速やかにリタイアしない場合には、その艇は、審問なしに、大会のすべてのレースで、得点を除外できない失格とされなければならず、プロテスト委員会は規則69.2に基づく審問を招集することを考慮しなければならない。

 

付則Pは、第2章以外の違反は本当は失格だけれども、ペナルティー履行で違反を解消が出来るようにするよ。というペナルティー減軽のルールですから、違反を重ねてしまうと違反はやっぱり違反となり、解消できなくなります。

 

ちなみにP2.3に出てきた規則69は、こちら。

 

69 不正行為

69.1 不正行為を犯さない義務、解決

(a) 競技者、艇のオーナーまたは支援者は、不正行為を犯してはならない。

(b) 不正行為とは、次のいずれかを指す。

  (1) グッド・マナーに違反する行為、グッド・スポーツマンシップに違反する行為、非倫理的振る舞いに該当する行為。

  (2) セーリング・スポーツの名誉を傷つけるかもしれない、または傷つけた行為。

(後略)

69.2 プロテスト委員会による処置

 

69.2の内容は割愛しますが、つまり、オン・ザ・ウォーター・ジャッジを無視して違反を続けるということは、不正行為とみなされる可能性がありますよ、ということです。

3回以上も笛を吹かれたら、「なんで自分ばっかり!」と思い、無視したくなる気持ちも分からなくはないですが、無視することがより重大な違反とみなされるトリガになることをお忘れなく。

そのために、なぜ違反だったのかを確認するようにしましょう。自分のセーリングの癖が違反とみなされるのならば、その癖は直しておかないと、楽しいレース活動が出来なくなってしまいます。

 

推進方法で違反とみなされるポイントは既出ので推進方法解釈の回を、ご確認ください!

 

ペナルティーの履行

さて、今までの回で紹介してきた規則のほとんどは、違反した場合、海上でそのペナルティーを履行できるものです。

 

ということで、今回はペナルティーの履行について、まとめたいと思います。

前提は、こちら。基本原則を再掲しておきます。

 

基本原則

スポーツマンシップと規則

セーリング・スポーツの競技者は、守り守らせる一連の規則により統制されている、スポーツマンシップの基本原則は、艇が規則に違反し、かつ免罪されない場合、速やかに適切なペナルティーまたは行動をとることであり、それはリタイアの場合もある。

 

自ら履行できるペナルティーの種類は以下の規則に記されています。

 

44 インシデント時のペナルティー

44.1 ペナルティーの履行

レース中に、1件のインシデントで1つかそれ以上の第2章の規則に違反したかもしれない艇は、『2回転ペナルティー』を履行することができる。規則31に違反したかもしれない艇は『1回転ペナルティー』を履行することができる。別の方法として、レース公示または帆走指示書により『得点ペナルティー』またはその他のペナルティーの適用を規程することができる。その場合、規程されたペナルティーを『1回転』または『2回転ペナルティー』と置き換えなければならない。

(中略)

(b) その艇が傷害または重大な損傷を引き起こしたり、違反により、ペナルティーを履行したとしてもそのレースまたはシリーズにおいて明らかに有利となった場合には、その艇のペナルティーはリタイアすることでなければならない。

 

ペナルティーの履行は

①規則31(マークとの接触)においては1回転

②その他の第2章規則においては2回転

NORSIに記載のあった場合は、①②が得点ペナルティーという場合もある

④重大な損傷を引き起こしたり、レース・レガッタで有利になる規則違反をした場合は、リタイアでペナルティーを解消できる(フィニッシュ後にもリタイアできる)

要は、スポーツマンシップに則って規則を守り、守れなかった場合には規程のペナルティーを履行すること。ということです。自分が違反があったと思ったらペナルティーを履行しましょう。

 

さて、①マークタッチは普通は自分で気付けると思います。④も接触等で重大な損傷を与えた場合になると思うので、気付くことが多いでしょう。自分が無事だからとレース続行するのは、相手あってのスポーツですから、スポーツマンシップ違反です。(相手の重大な損傷に気付かなくてレース続行してしまうことはあるかもしれませんが、後でリタイア出来ます。)

では、②はどうでしょうか。自ら誤りを自認した場合はペナルティーの履行をすればよいのですが、例えば抗議をされた時に自艇に違反が無い!と思ったら?

 

自艇に違反が無いことを立証できるのであれば、ペナルティーを履行しなくても良いです。つまり、「抗議をされたら回らなければならない」わけではないということです。ただ、審問で負ける可能性はありますから、それを含んでペナルティーを履行しなければ良いわけです。

「抗議されたから一応ペナルティーを履行して、そして相手艇を抗議する」という発想(ケース)を見受けますが、その「ペナルティーを履行した」事実は自分が違反を認めた証となることをお忘れなく。自分の判断・行動の意味について、よくよく整理しましょう。

抗議についての詳しくは、別の回に書こうと思っています。

 

①②の回転の仕方は以下です。

 

44.2 1回転と2回転ペナルティー

艇はインシデントの後できるだけ早く他艇から十分離れた後、1回のタックと1回のジャイブを含む回転を、同一方向に必要数だけ速やかに行うことにより、『1回転』または『2回転ペナルティー』を履行したこととする。(後略)

 

ケースに泡を食って慌ててペナルティーを履行、つまり他艇から十分に離れずにペナルティーを履行したり、「回転」360度回転・740度回転と勘違いしてタック・ジャイブの回数を端折ってしまったり、というのはありがちですので、なんのケースでペナルティーを履行するのか、周囲をよく見て、冷静に判断・行動しましょう。

 

マークタッチしたと思って1回転ペナルティーを履行したけれど、実は他艇からゾーン内でのルールで抗議されていたりすることもあります。その場合は履行すべきペナルティー2回転です。

では、他艇とのケースにおいてマークタッチもしてしまった場合は、3回転??と慌ててしまう前に、以下の規則があることも知っておきましょう。

 

44.1 ペナルティーの履行

(前略)

(a) 艇が同一のインシデントで第2章の規則と規則31に違反した場合、規則31違反によるペナルティーを履行する必要はない。

(後略)

※前後略部分は上述。

 

あくまでも同一のインシデントの場合の話ですので、ケースを起こした後にマークを回航してから2回転しようと思って、そのマーク回航でマークタッチしたような場合などは、明らかに同一のインシデントではないですので、その場合は3回転することでペナルティーを解消することが出来ます。

 

そして、③が採用されている場合は、以下です。

 

44.3 得点ペナルティー

(a) 艇は、インシデントの後、最初の妥当な機会に黄色旗を掲揚することにより、『得点ペナルティー』を履行したこととする。

(b) 艇が『得点ペナルティー』を履行した場合、黄色旗をフィニッシュするまで掲揚し続け、フィニッシュ・ラインでその旗についてレース委員会の注意を喚起しなければならない。(後略)

 

オフショアレースで適用されることが多いですが、出走艇数の多いレースで適用されることもあります。いずれにしても、NORSIに記載があって初めて適用されるものですから、適用レースに出走する場合は、黄色旗を準備するのを忘れないようにしましょう。

 

付則Pと推進方法の解釈

今回は、

規則42 推進方法

付則P 規則42に関する特別な手順

についてです。付則Pが適用されるレースに出る場合は、よくよく確認しておきましょう!

 

簡単に言うと、推進方法については規則42の通りシーマンシップに基づいて行動しなければならないですが、付則Pが適用されることによりオン・ザ・ウォーター・ジャッジでの規則42の判定が有効となり、海上でペナルティーを課す(課される)ことが出来るようになります。

 

前提は以下です。

 

付則P 規則42に関する特別な手順

この付則のすべてまたは一部は、レース公示または帆走指示書にその旨記載された場合にのみ、適用される。

 

→逆に言うと、オンザ・ウォーター・ジャッジをレースで採用しようと思ったら、NORSIに事前に記載しておく必要があるので、大会実行委員会はレースの方針を決めるところで付則P適用するかどうかも検討します。

 

さて、ジュリー・ボートがうろうろしているレース海面って、なんだかとりあえずじっとしていなきゃ。と思うこともあるかもしれませんが、ジュリーは違反を取り締まりたいわけではなく、公正なレース運営の一役を担っているわけで、OK動作とNG動作を明確にするために存在します。従って、自分の推進方法に違反が無ければ、なんの問題もありません。

では、ジュリーは何を見て推進方法を判定しているのか?

RRS外なのですが、「規則42「推進方法」の解釈」というものが、World Sailingから出されており、JSAFによる日本語訳もJSAF HPに出ていますので、ご確認ください。

https://www.jsaf.or.jp/rule/pdf/RRS42Interpretation20130515-trans201307.pdf

 

基本解釈をまとめると以下です。※こちらの2つの過去記事(OK回NG回)と合わせて確認してください。

・規則42.2に示されていない動作でも、禁止されることがある。(艇を推進させる動作であれば、42.2で禁止されていなくてもNG

・規則42.3で例外として許されている動作以外の推進させる効果のある体の動きは1回でもNG

・規則42.2の動作は、それで推進力を得なくてもNG

 

そして先にRRSに記載はないですが、動作について定義付けられているものを紹介します。

フリック

身体の動きや急にセールを引き込んだり緩めたりすることによって引き起こされる、セールの通常の形状が変化してほぼ直ちに元に戻ることで生まれる効果。

パンプ

風または波と無関係に、セールを一回引き込むことこと。

繰り返し

あるレグの同じエリアで2回以上行うこと。

ロール

マストが風下へ行き風上へ戻る、またはその逆の、艇の左右方向の一周期の動き。

トルキング

繰り返して行われる前後またはねじるような身体の動き。

バックグラウンド・ローリング

波によって引き起こされる最小限のローリング。

ボディー・パンピング

身体を上下や艇の左右方向に動かすことによて引き起こされるセールの動き。

 

さて、42.2で禁止された各動きの中で、特にオン・ザ・ウォーターのジャッジが見ていて、これはNGというものを以下に記載します。

 

パンピング

・ボディー・パンピングによるセールの繰り返しのフリックはNG

・プレーニングやサーフィングしようとしてパンピングして失敗を繰り返す場合、連続で三度失敗するとNG。(パンピングできるのはその艇がパンピングによってサーフィングまたはプレーニングが可能な状況であることがそもそもの必須条件)

・「一波/一吹きにおいて一パンプ」は、既にサーフィング・プレーニングしている艇には適用されないので、一度サーフィング・プレーニングしたら、その後に続けてパンピングはNG

 

ロッキング

・動作の直後に艇が繰り返しローリングするようなロッキングは一回の身体の動きでもNG

・波のパターンに連動しない繰り返しのローリングは、ロッキングとみなされNG

 

ウーチング

・波に合わせての艇の前後トリムのトルキングによって、セールのパンピングを起こす場合はNG

・平水面でのトルキングはNG

 

スカリング

・許されたスカリングをした後、そのスカリングを打ち消すように継続するスカリングはNG

・セールの逆張りによる艇の操舵を打ち消すスカリングはNG

 

オン・ザ・ウォーターで笛を吹かれたら、必ずペナルティーを履行しなければなりません。ペナルティーを履行しない場合は、審問無しに失格となりますので気を付けてください。

そして、自艇が何に違反したかわからなかったら(レースによっては規則42違反について公式掲示板に張り出すこともありますが)、後でもジュリーに違反内容の確認することをオススメします。無意識に身体を動かしていて、それを違反ととられる場合がありますので、自分のどんなセーリングの癖に違反のリスクがあるのか知っておくことは有益でしょう。

 

今回、この動きはNG解釈だよ、というものだけ抜粋しました。OKというものも、前述URLの「推進方法の解釈」文書内に記載されていますので、見てみてくださいね。