Destino-sailing

セーリング競技規則やレース運営を中心に、セーリングライフについて書いています。

付則とは

推進方法のOKなこととNGなことを書きましたので、関連する付則Pという規則(前回もちょっとだけ紹介しました)についても確認しておきたいです。

 

が、その前に、そもそも付則とは何か?を先に。

RRSの基本構成の回でも少し触れましたが、付則とは、付帯的な規則のことで、序文に以下の記載があります。

 

序文

セーリング競技規則』は、2つの主要な部分に分かれている。第1の部分、第1章ー第7章は、すべての競技者にかかわる規則からなる。第2の部分、付則は、規則の詳細、特定の種類のレースに適用される規則、および一部の競技者または競技役員にのみかかわる規則からなる。

 

付則

付則の規則が適用される場合、これらと矛盾する第1章ー第7章の規則及び定義に優先する。それぞれの付則は文字により特定される。付則の規則を引用する場合、文字と規則番号を含める。(例えば、「規則A1」)。IOQの文字は、本書において付則を指定するためには用いない。

 

前回までに記載してきたことは、全て序文に書かれているところの「第1の部分」の「章」の部分の話でした。

「第2の部分」は、付則です。どんな付則があるかを知っていれば、レース運営の際や、該当するケース・レースの際にその付則部分を見ればよいので、紹介しておきます。

付則A 得点

付則B ウィンドサーフィン・フリート・レース競技規則

付則C マッチ・レース規則

付則D チーム・レース規則

付則E ラジオ・セーリング競技規則

付則F カイトボーディング競技規則

付則G セール上の識別

付則H 衣類と装備の計量

付則J レース公示と帆走指示書

付則M プロテスト委員会に対する提言

付則N インターナショナル・ジュリー

付則P 規則42に関する特別な手順

付則R 上告と要請の手順

付則S 標準帆走指示書

付則T 調停

 

この中の、付則P 規則42に関する特別な手順 というところを次回に書きたいと思います。

 

推進方法に関する規則 NGなこと

前回、OK推進方法のことを書きましたので、今回はNGな推進方法をまとめます。

 

42.2 禁止される行動

規則42.1の適用を制限することなしに、次の行動を禁止する。

→逆に言うと、この規則の適用を制限することは可能です。

 

NG規則まとめると言いつつ、更なる例外を先に紹介してしまうのですが、、

 

付則P 規則42に関する特別な手順

P5 O旗とR

P5.1  規則P5が適用される場合

規則P5は、クラス規則が、風速が規程の制限を超えたときにパンピング、ロッキングおよびウーチングを許可している場合に適用される。

→クラススルールで決められたOKとされる場合があるということで、

例えば470はコース全体で平均8knots以上の風域でレース委員会がO旗を掲揚した場合、パンピング・ロッキング・ウーチングOKです。

例えば420は同様にコース全体で平均13knots以上でパンピング・ロッキング・ウーチングOKとなります。

 

さて、取り直して、以下の規則42.2(a)(e)について、まず書いてあることの理解をし、次の回で判定する解釈について確認したいと思います。

 

42.2 禁止される行動

規則42.1の適用を制限することなしに、次の行動を禁止する。

(a) パンピング

次のいずれかにより、セールを繰り返しファンニングすること。

・セールを引き込んで緩めること

・上下や艇の幅方向に身体を動かすこと

→セールをパタパタさせて推進力を得るのはNGです。セールをシートでパタパタさせるだけでなく、艇を揺らすことでパタパタさせることもNGです。

 

(b) ロッキング

次のいずれかにより、艇を繰り返しロールさせること。

 (1) 体を動かすこと

 (2) セールまたはセンターボードを繰り返し調整すること。

 (3) 操舵

→結果パンピングさせることも含め、艇の形状等によっては艇を動かすことで推進力を得られることがありますが、それはNGです。

 

(c) ウーチング

身体を急速に前方へ動かして、急に止まること。

ロッキングは前後左右への繰り返しの動作によって推進力を得ることですが、ウーチングは波に乗る時など、一気に前方に過重することで、止まるというより実際は加速できるために、サーフィングのきっかけを作ったりすることができ、それはNGです。

 

(d) スカリング

次のいずれかのように、舵を繰り返し動かすこと。

・力強く

・艇を前に推進させる

・艇が後進するのを防ぐ

→前に進むために一生懸命漕ぐのはNGです。ただし、前回の例外で紹介した通り、クロースホールドより風上からクロースホールドまではスカルしてOKです。

 

(e) 風の振れまたは戦術上の駆け引きと無関係に、繰り返しタックまたはジャイブすること。

→微軽風のレース等でありがちですが、推進する力を得るためだけにタックやジャイブをし、風を生み出して進むことをNGとしています。

 

上記は規則ですが、選手として、どうしたらパンピングとされるのか、繰り返しのタックやジャイブの判定基準って?を知っておくことは大切ですので、次回は「規則42推進方法の解釈」というルールブック外の文書を紹介したいと思います。

推進方法に関する規則 OKなこと

推進方法に関することが、規則42書かれています。

セーリング」と一言で言っても、何をもってセーリングとするか。という超根本的なことと、そのセーリング(帆走)の仕方によってはRRS的に「セーリング」とみなしませんよ、ということです。

 

そもそも、「セーリング」って何でしょうね。

ウィキペディアにはこんな風に書かれていました。

 

セーリング(英: sailing)あるいは帆走(はんそう)とは、帆の表面を流れる風によって生ずる揚力を利用して、水上などを進むことや滑走すること。

 

揚力を利用して推進すること、とのこと。

揚力は色々な方法で生み出せます。ジェット機ジェットエンジンで機体を動かし、揚力を生み出して飛行するように、ヨットでも自らの力で風を生み出して揚力をつけることが可能です。ディンギーならスターンでバタ足したり、バウでクロールしたりしても、セールに揚力を生み出せます。

レース中に生み出す揚力について、規則として設定しているのが、規則42です。

 

42 推進方法

42.1 原則

規則42.3または45により認められている場合を除き、艇はそのスピードを増し、持続しまたは減ずるために、風と水のみを用いて競技しなければならない。乗員は、セールや艇体のトリムを調整し、シーマンシップに基づいたその他の行動を取ることはできるが、これ以外には艇を推進するために身体を動かしてはならない。

 

とにかく、風と水だけを使って走らせる競技であり、トリムとボートバランスをとる以外の動きは規則42に抵触する可能性があります。という原則です。

 

余談ですが、アイスヨットは氷は水の個体なので、水ということなのでしょうか、JSAFのHPでアイスヨット紹介されたりしています。ランドヨットはセーリングというカテゴリーではなくRRSは適用されないのでしょうかね・・・?わかったらどこかで書くかもしれません。

 

さて、例外を先に確認しておきましょう。以下はOKな推進方法です。

 

42.3 例外

(a) 艇は、操舵を容易にするためにロールさせてもよい。

ラダーを抜いて操船の練習をすることもあるかと思いますが、ウィンドサーフィンはそもそもラダーが無いですが、艇の傾きで艇を操舵することは自然なことです。アンヒールしなければベアできない艇もありますし、操舵のためのロール(ヒール)はOKです。ヒールをつけて上る・アンヒールしてベアする・ロールタック・ロールジャイブはOKです。

 

(b) タックまたはジャイブ中に、艇の操舵を容易にするローリングを大きくするために、艇の乗員は体を動かしてもよい。ただし、そのタックまたはジャイブを完了した直後に、艇のスピードがタックまたはジャイブをしなかったときに較べて速くならないような身体の動かし方に限る。

→ヒールをつけて上る・アンヒールしてベアする・ロールタック・ロールジャイブのロールを大きくすることはOKです。(しなかった時より速くならないようにするというのは、証明が難しい感じがします・・・)

 

(c) サーフィング(急速に加速しながら波の前面を下ること)、プレーニングまたはフォイリングが可能な場合、

 (1) サーフィングまたはプレーニングを開始するために、それぞれのセールを一波または風の一吹きにつき一度限り引き込むことができる。

 (2) フォイリングを開始するために、それぞれのセールを何度でも引き込むことができる。

→今回のルール改正で、風上航でもなんでもということと、フォイリング艇に対するパンピングの許容範囲が広がったという感じでしょうか。

要は、フォイル艇以外は、一波/一吹きに一パンプOKで、フォイル艇はフォイルするためであれば、繰り返しのパンプがOKということです。

 

(d) 艇がクロースホールドのコースよりも風上に向かって、静止しているか、またはゆっくり動いている場合、艇はクロースホールドのコースまで、方向転換するためなら、スカルしてもよい。

→スタート前等で、風上に向いて止まっている時、走り出すためにクロースホールドのコースまではスカルしてOKですが、それより下に向けるためにスカルしてはNGです。

 

(e) バテンが裏返っている場合には、艇の乗員はバテンが正しく返るまで、セールをパンプすることができる。この行動は、艇を明らかに推進する場合には、許されない。

→フルバテンの箇所・セールで起きがちな、バテンが返らない問題ですが、バテンが返るまではパンプしてOKです。

 

(f) 艇は、減速のために繰り返し舵を動かしてもよい。

→クルーザーではなかなか難しいと思いますが、ディンギーでは下マークでの回航で前の艇に追いつきそうな時等、スカルして速度調整をしてOKです。

 

(g) 危険な状態にある人員または他の船舶を救助するためには、どのような推進方法を用いてもよい。

(h) 座礁後、または他の船舶や物体と衝突後、それらから離れるために、艇は自艇または相手の船舶の乗員の力、および推進エンジン以外の装備による力を用いてよい。ただし、エンジンの使用は規則42.3(i)により許されることがある。

(i) 帆走指示書により、そこに記載された状況において、エンジンまたはその他の手段を使用した推進方法を許可することができる。ただし、艇がそのレースで明らかな有利を得ない場合に限る。

→読んで字のごとく。人命救助や、命や艇を守るための行動であれば、エンジン利用等含め、例外的にOKです。

 

45 上架、係留、投錨

艇は準備信号時には水上に浮かんでおり、もやいを解いていなければならない。その後は、水の汲み出し、セールのリーフ、または修理を行う場合を除き、陸上に引き揚げたり、係留したりしてはならない。艇は投錨してもよいし、乗員が水底に立ってもよい。艇はレースを継続する前に回収できない場合を除き、アンカーを回収しなければならない。

 

ディンギーのレースではほとんど適用されることは無いと思いますが、クルーザーではあり得るシーンかと思います。潮がきついスタートでアンカリングすることがあるかもしれません。その時に、アンカーを引き上げる力で推進力を生むと、規則42条違反になりかねないという程度でしょうか。あとは、帆走指示書に従う部分が多いルールでしょう。

 

このような例外を先にあげましたが、ということは「NG行動」があるわけです。

 

2021年あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。

RRS2021-2024の適用が始まりました。

三が日からセーリング始めた方もいらっしゃるかと思いますし、各地で海上安全祈願祭が行われていたようですね。

レース中のヴァンデグローブも、この三が日にトップ艇がホーン岬を越えて、最終レグに入ったとのこと。

 

今年の皆様の海上での安全を祈願します。

障害物における規則 運営は・・・

今回のルール改正で、障害物における規則に、以下が追加されました。

 

20.4 声かけの追加要件

(a) 声かけが聞こえないかもしれない状況の場合、艇はタックするためのルームが必要であること、または声かけに応じることを、明確に示す信号もまた発しなければならない。

(b) レース公示では、タックするためのルームが必要であること、または声かけに応じることを艇が示すための代替手段を規定し、艇がその手段を使うよう求めることができる。

 

そもそも、艇種によっては艇内でも声が届かない場合もあるわけですから、大声で叫んでも他艇に聞こえない状況は容易に想像がつきます。

これは今後、より明確化されていきそうな規則ですね。通信に関するテクノロジーの進化等も想定された文言になっているようです。運営側もよく考えていかなければならない規則が追加されました。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

さて、障害物における規則の話はここまでとなります。

今回の改正で障害物の定義に「境界線」が加わったことや、前述の規則20.4含め、運営側が関与できる危険回避のための設定幅が広がったようです。

艇の性能が向上することで危険が増すケースもある一方、テクノロジーの進化で危険回避することも出来るでしょう。そのバランスで安全なレース運営をすることが運営側に求められていると言えます。

 

そしてレースに参加する側も、この障害物という部分だけでなく、艇のメンテナンスやセーラー自身の装備等も含め、主体的に安全なレースを作っていく意識を持つことが、色々なレガッタが継続して実施され続けていくことに繋がると思います。ただでさえ人口の少ないセーリング競技。競技のフィールドを少なくとも減らさないためには、一人一人のこういった心の持ちようも大切だと思う次第です。

 

 

本回にて第2章までほぼ網羅できたと思います。海上で帆走中におきる艇間で抗議となるケースは、ほぼ第1章~第2章の規則の適用範囲に入っていますので、参考にしていただけると嬉しいです。

ただ、初めの方の回にも書きましたが、本ブログはあくまでもわかりやすくルール理解を促す目的で書いていますので、日本語の表現や内容、またルールの解釈についてはその責を負いません。

実際にルールを適用する場合は、RRS現行の英語版を解釈の礎としてくださいね。

 

いよいよRRS2021-2024が適用となります。これからも色々なポイントをわかりやすく書いていきたいと思っています!

良い年をお迎えください。

障害物における規則 続き②

さて、障害物でのルームを求める「声かけ」をされたらどうするか、という話です。

相手が「そこは声かけするところじゃないよ~」という声かけをしてきたとしても、声をかけられたら応じなければならないことは前回書きましたので、その続きです。

 

20.2 応じること

(c)声をかけられた艇は、次のいずれかで応じなければならない。

・できるだけ早くタックする

・直ちに「You Tack(タックせよ)」と答え、その後に声をかけた艇にタックして自艇を回避するためのルームを与える

→声をかけられたら、応じなければなりません。応じるとは、自分がタックするか、相手(声をかけた艇)にタックさせて、その艇を避けるか。しかも、相手にタックさせる場合に言う言葉が決まっています。「You tack.(タックせよ)」

ちなみに、障害物でタックしたいことを伝える英語は「Room to tack!」ですこちらは厳密な言葉は定められていませんが、覚えておきましょう。

 

声をかける側の艇の話に戻ります。

 

(d)声をかけられた艇が応じた場合、声をかけた艇はできるだけ早くタックしなければならない。

→「障害物が迫っているからタックしてくれ~」と、相手艇に声をかけたらタックしてくれたけど、あれ?通れたわ・・・とそのまま行くのはダメすよ。自分の声かけに応じてタックしてくれたら、タックしなければならないし、「You Tack」と言われたらタックしなければなりません。いずれにしても、声かけしたらタックしなければならないです。

 

(e)艇が声をかけた時から、その艇がタックして声をかけられた艇を回避するまで、規則18.2はそれらの艇間には適用されない。

→一度障害物でのルームを求めたら、マークルームの規則は併用されません。

 

さて、規則19と規則20を簡単にまとめると、こんな感じでしょうか。

 

・障害物どちら側を通過するかは、航路権艇に選択権がある。

・障害物通過時にオーバーラップしていたら、内側艇にルームを与える。

 

(障害物通過のためにタックをする艇がルームを求める場合)

・クロースホールドかそれより風上に帆走してる時だけ、声かけできる。

・相手艇が声かけに応じてくれたら、必ずタックする。

 

(応じる側)

・声をかけられたら応じなければならない。応じる方法は2つ。自分がタックするか、You tackと言って相手がタックしたら避けてあげる。

20.1に違反して声かけされていたら、応じてから抗議する。

 

それから、複数の艇がそこにいた場合は、以下の規則も適用されます。

20.3 声かけをさらに別の艇にする場合

タックするルームの声をかけられた艇が、タックすることによって応じようとする場合、もう1艇の同一タック艇に、タックしてその艇を回避するためのルームを求めて声をかけることができる。その艇は自身の声かけが規則20.1の条件を満たしていなくても、声をかけることができる。規則20.2は自艇と自艇が声をかける艇との間で適用される。

応じなければならない。は、次々に連鎖するけれど、応じなければならないためだから、20.1違反でも仕方ないということです。

こういった「免罪」については、別の回にて。

 

障害物における規則 続き

続きです。航路権艇は障害物のどちら側を通過するか選ぶことが出来ます。

障害物をベアして避ける時のことを前回書きました。今回は、障害物をタックして避ける場合についてです。

すごく紛らわしいので、注意して読み解きましょう。

 

20 障害物においてタックするためのルーム

20.1 声をかけること

艇はタックするため、および同一タックの艇を回避するためのルームを求めて、声をかけることができる。

→障害物をタックして避ける場合、ルームを求めて声をかけることができるが、かけなくてもよい。

 

ただし、次の場合を除いて声をかけてはならない。

→しかも、声かけできるのは次の場合のみ

 

(a) 障害物に近づいて、安全に障害物を回避するために間もなく大幅なコース変更が必要になる場合。かつ、

(b) クロースホールドまたはそれより風上を帆走している場合。

→声をかけていいのは、クロースホールドかそれより風上航において障害物を避けるために大きくコース変更(タックとか)する場合だけ。

 

加えて、障害物マークであり、かつそれをフェッチングしている艇が声掛けの結果、コース変更を求められることになる場合には、艇は声をかけてはならない。

→さらに、「障害物かつマーク」をフェッチングしている艇にコース変更をさせるような声をかけてはだめ。

 

例えば、島回りレースで、クロースホールドで島に近づき、クロックで回ろうとポートでアプローチしていて、自艇はポートの風下艇で航路権艇だと想定します。風上にオーバーラップしているポート艇がギリギリ島を回れる位置にいる(フェッチングしている)場合、自艇はこのまま真っすぐ行ったら島に突っ込んでしまうとはいえ、自分がタックしたいとルームを求めることで、相手艇をタックさせるようなことは出来ないということです。そして、タックしたらスターボード艇になるけれど、スターボードとなった自艇を避けるルームを与えられないような場合もあり得ます。そんな場合は、どうしようもないですよ。そうなる前にルームを作ってからタックするか、最悪はジャイブして避けることになりますよ。

 

20.2 応じること

(a) 艇は声をかけた後、声をかけられた艇が応じるための時間を与えなければならない。

→ギリギリでルームを求めても、相手が応じられない状況では、諦めてください。

 

障害物の規則、少し複雑ですね。とはいえ、声をかけていいか、かけてはいけないか、考えている間に障害物に突っ込んでしまったら元も子もありません。

それにしても、声をかけるの、ドキドキしますね。。。

しかし、これは基本的には安全に障害物を通過するための規則です!

 

(b) 声をかけられた艇は、その声かけが規則20.1に違反しているとしても、応じなければならない。

 

ちょっと、ほっ。

でも、もちろん、違反した声かけをして相手が応じてくれた場合、後からその違反について抗議される可能性はありますよ。でも、障害物に突っ込んで、自分が障害物になるよりはマシという話です。

 

障害物における規則

さて、本題に入りますが、少し難しいので、一つずつイメージしながら読み解きます。

 

19.2 障害物においてルームを与えること

(a) 航路権艇は、障害物のどちら側を通過するかを選ぶことが出来る。

 

風上航でのポートタックで近い位置でオーバーラップしている2艇間のケースを想像してみてください。

自艇がオーバーラップしたポートの風下艇だとします。ポート艇の2艇間では、自艇が航路権艇です。そこに、両艇とミートする位置にスターボード艇が来ます。航路権艇である自艇は障害物であるスターボード艇のどちら側を通過するか選ぶことが出来ます。

つまり、タックして受けることも出来るし、ベアして後ろを通ることも出来ます。

タックして受ける場合のことは次回以降にして、ベアして後ろをを通ることにします。

 

(b) 複数の艇がオーバーラップしている場合、外側艇は内側艇に、自艇と障害物の間のルームを与えなければならない。(後略)

 

自艇が障害物であるスターボード艇をベアして避ける時に、風上側にオーバーラップしているポート艇も、そのスターボード艇とミートです。そのポート艇が、スターボード艇をベアして避ける場合、障害物に対して外側艇である自艇は、内側艇である風上艇に障害物を通るルームを与えなければなりません。

また、そのポート艇より更に風上側にオーバーラップしているポート艇がいた場合、各艇間で風下の航路権艇が存在し、それぞれが障害物(スターボード艇)のどちら側を通過するか選ぶことができます。航路権艇が障害物を避けるためにベアする場合、同様に内側を通過するルームを与えなければならないです。つまり、このようなシーンで風上側にオーバーラップする艇が複数あった場合、自艇とオーバーラップした風上側の各艇間で上記と同じことが複数艇間分起きると、自艇は延々と風上艇団にルームを与える必要があります。

(a)のシーンで自艇が障害物のどちらを通過するか選べますので、状況をよくみてどちら側を通過するか選択しましょう。

 

(b)  (前略)ただし、オーバーラップが始まった時からではルームを与えることができない場合を除く。

 

いつオーバーラップしたかによって、不可避であれば仕方ないですが。ということですね。

マークルームの規則同様、あくまでも障害物を通過するための規則です。そもそもの航路権ではポートの風上艇は非航路権艇です。もし自艇が非航路権艇の場合は、障害物の大きさ・自艇のスピード/角度やケイパビリティ・周囲の艇との位置関係等をよく見て、舵取りの判断をしましょう。

 

(c) 複数の艇が連続する障害物を通過している間、クリア・アスター避けていなければならない艇が、相手艇と障害物の間にオーバーラップし、オーバーラップが始まった時点で、それらの間を通過するルームがない場合には、

 (1) その艇には規則19.2(b)に基づくルームを得る資格はない。

 (2) オーバーラップが続いている間、その艇は避けていなければならず、規則10と規則11は適用されない。

 

これは、突然の割り込み禁止ということですね。障害物の特性も考えてみましょう。障害物は航路権艇だけではありません。複数の沈艇や島である可能性もあります。いくらスピードが良くて無理矢理突っ込んでオーバーラップ出来てルームをくれと言っても、もはや外側艇が避けられない場合、障害物に突っ込むことになりますよ。いくら航路権があってそんなことしては、ダメですよ。スピード落としてでも、順番に通過してください。さもないと、自艇が別の障害物になりかねないですよ~~。

 

障害物の規則で難しいところは、マークルームの規則と違って「ゾーン」という規則が適用されるエリアが明確ではないことです。

(a) 航路権艇は、障害物のどちら側を通過するかを選ぶことが出来る。

とはいえ、どのタイミングで選んで行動するか、その間にも航路権の入れ替えが発生する可能性もあるわけです。障害物は安全のためのルールでもあるので、繰り返しになりますが、自分の行動の意思表示をどのタイミングですることが適切か、それを障害物の状況・自艇と他艇の状態・周囲の艇との位置関係等から判断をしましょう。

 

障害物における規則が適用される時

規則19、障害物においての規則が適用される場合について、前回、中略してしまった部分含めて再掲します。

 

19 障害物を通過するためのルーム

19.1 規則19が適用される場合

規則19は、障害物における2艇間に適用される。ただし、次のいすれかの場合を除く。

(a) 障害物が、艇の同一の側で通過することが求められているマークでもある場合。

(b) その艇間に規則18が適用され、障害物がそれぞれの艇とオーバーラップしている他艇である場合。

ただし連続した障害物においては、規則19が常に適用され、規則18は適用されない。

 

(a)の状況は前回説明しましたので、(b)の状況を分解してみます。

・規則18が適用されている状態=マークルームを与える/もらう状態で、

・障害物が他艇である場合=航路権艇や、避けなければならない艇と、

・オーバーラップしている場合。

です。

そして、その場合は規則19は適用されないよということです。

通常のゾーン内のマークルームを想像すれば、そんなに難しいことではありません。普通の規則18です。なので、規則19は適用されないという話です。

 

但し、それが「連続した障害物においては規則18は適用されない。」とあります。逆に言うと、(a)(b)のケースでも、そのシーンで障害物が連続していると規則19になるということ。それはどんな時?

ということで、定義を再確認してみましょう。

 

定義 障害物

(前略)他艇が避けている必要がある艇、または規則22が適用され他艇が回避する必要がある艇を除き、レース中の艇は他艇にとって障害物ではない。レース中の艇を含む航行中の船舶は、連続した障害物とされることはない。

 

レース中の艇は連続した障害物にはならないので、「連続した障害物」とは、陸地や、漁網や、大きいバージ船等のことになります。その場合は、それがマーク(島など)であっても、規則19が適用されるということです。

 

整理すると、規則19が適用されるのは、

・ゾーン外(規則18が適用されない)での対・避けなければならない艇における2艇間

・連続した障害物における2艇間

となります。

 

なんだか、禅問答のようですね・・・。

 

障害物とは

前回が、「避けていなければならない時」の話でしたが、その中の一つ、規則19は障害物を通過する時のルールです。

こちらは、マークルームの規則と同じく、2章のC節に含まれます。まずは定義から。

 

定義 障害物

艇がそれに向かって真っすぐに帆走していて、それから1艇身になったときに、コースの大幅な変更をせずに通過することができないものを障害物という。また一方の側しか安全に通過することのできないもの、および帆走指示書によりそのように指定された物体、区域また境界線も障害物という。ただし、他艇が避けている必要がある艇、または規則22が適用され他艇が回避する必要がある艇を除き、レース中の艇は他艇にとって障害物ではない。レース中の艇を含む航行中の船舶は、連続した障害物とされることはない。

 

今までにも障害物については少し触れてきていますが、具体的に障害物とはなんでしょうか。

前回紹介した、避けなければならない艇や、停泊しているバージ・釣り糸を垂らして止まっている遊漁船、定置網等の漁網、帆走禁止区域、陸地や島、浅瀬や暗礁等、でしょうか。

 

ポイントは、

レース中の艇は他艇にとって障害物ではない。

と書いてあるにも関わらず、前回紹介した3つのグループの「避けていればならない」艇は障害物というところです。

つまり、例えば、航路権艇は障害物です。

 

そして、前回の紹介では番外グループにあった規則22に記載のある「転覆および転覆からの回復中の艇、投錨または座礁している艇、救助している艇」は障害物に含まれます。

 

では、島回りレースで、コース上で回航すべきものが島の時、それは「マーク」?「障害物」?

 

19 障害物を通過するためのルーム

19.1 規則19が適用される場合

規則19は、障害物における2艇間に適用される。ただし、次のいすれかの場合を除く。

(a) 障害物が、艇の同一の側で通過することが求められているマークでもある場合。

(中略)

ただし連続した障害物においては、規則19が常に適用され、規則18は適用されない。

 

島回りレースでの島は(a)が該当しますね。つまり、マークです。

でも、島は連続した障害物になるので、そこでは規則19が適用されるということです。

 

次回へ続く。。。

避けていなければならない時

今回は、あちこちの規則に散見されるものの一つ、「避けていなければならない」をまとめて紹介します。

 

1つ目のグループは、基本の基でやったところ。復習です。

A節 航路権

10 反対タックの場合

 ポート艇がスターボード艇を避けていなければならない。

11 同一タックでオーバーラップしている場合

 風上艇が風下艇を避けていなければならない。

12 同一タックでオーバーラップしていない場合

 クリア・アスターン艇がクリア・アヘッド艇を避けていなければならない。

13 タッキング中

 風位を越えてからクローズホールドになるまで、他艇を避けていなければならない。

 同時タックの場合は、ポート艇か後方艇が避けていなければならない。

 

2つ目のグループは、上記の基本ルールも適用されない場合。とにかく、避けなければならない時のこと。

D節 その他の規則

2艇間に規則21または22が適用される場合、A節の規則は適用されない。

21 スタートの誤り、ペナルティーの履行、セールを逆に張ること

21.1 スタート信号後、スタートするため、または規則30.1に従うために、スタート・ラインまたはそのどちらかの延長線のプレスタート・サイドに向かって帆走している艇は、艇体がプレスタート・サイドに完全に入るまでは、そうでない艇を避けていなければならない。

 ちゃんとスタートできなかった艇がそれを解消しようとする場合、ちゃんとスタートしている艇を避けていなければならない。

 ※規則30.1I旗規則

21.2 ペナルティーを履行している艇は、そうでない艇を避けていなければならない。

21.3 セールを逆に張って水面に対して、後進しているかまたは風上に向かって真横方向に移動している艇は、そうでない艇を避けていなければならない。

 

3つ目は、障害物におけるケースです。

19.2(c) 複数の艇が連続する障害物を通過している間、クリア・アスターン艇で避けていなければならない艇が、相手艇と障害物の間にオーバーラップし、オーバーラップが始まった時点で、それらの間を通過するルームが無い場合には、

 (中略)

 (2) オーバーラップが続いている間、その艇は避けていなければならず、規則10と規則11は適用されない。

 

そして番外グループとして「可能な限り、回避しなければならない」「常識的に可能な場合には、妨害してはならない。」も紹介しておきます。

14 接触の回避

艇は、常識的に可能な場合には、他艇との接触を回避しなければならない。(後略)

22 転覆、投錨または座礁、救助

可能な場合には、艇は、転覆しているかまたは転覆した後コントロールを回復していない艇、投錨または座礁している艇、または危険な状態にある人員または船舶を救助しようとしている艇を回避しなければならない。(後略)

 番外グループに入っていますが、前述のD節の前文にある通り、規則22にはA節航路権は適用されません。

23 他艇に対する妨害

23.1 常識的に可能な場合には、レース中でない艇は、レース中の艇を妨害してはならない。

23.2 常識的に可能な場合には、艇はペナルティーを履行している艇または他のレグを帆走中の艇もしくは規則21.1に従っている艇を妨害してはならない。ただし、スタート信号後、プロパー・コースを帆走中の場合は、この規則は適用されない。

 

ほとんど読んで字のごとくだと思いますが、

次回からは、3つ目のグループで紹介した「障害物」について書いていきたいと思います。

ゾーン内でのタックとジャイブ

一番小難しい規則18の主要部分が終わりました。

が、もう少しだけ補足があるので、ここまでやっつけてしまいましょう。

 

18.3 ゾーン内で風位を越える場合

ポートに見て通過するマークゾーン内で、艇がポート・タックからスターボード・タックに風位を越え、それによりマークフェッチングする場合には、その艇は、

ゾーンに入ったときからスターボード・タックであった艇に、接触を回避するためクロースホールドより風上を帆走させてはならない。

ゾーンに入ったときからスターボード・タックであった艇が自艇の内側にオーバーラップした場合には、マークルームを与えなければならない。

艇と艇の間にこの規則が適用される場合、規則18.2はそれらの艇間には適用されない。

 

アンクロックの風上にあるマーク回航において、ポートでゾーンに入るだけでなく、ゾーンに入る時はスターボードでも足らずにタックしてポートになり、またタックしてスターボードになるという状況含め、ゾーン内でポートからスターボードにタックしたらマークをフェッチングする場合、このルールが適用されます。とにかく、スターボード艇を避けること。そしてスターボード艇があとから内側艇になった場合でもマークルームを与えること。自艇がポートで、スターボード艇の前でギリギリでタックするような場合、内側にスターボード艇が通れるルームを取った風上でタックするということですね。

逆に言うと、自艇がスターボードでゾーンに入った時に、目の前でポート艇がタックしてマークに向かったら、基本的に自分が避ける行動はしないということです。追い付いてしまって接触を回避する場合は、クロースホールドより風上を帆走して、プロテストをかけられます。

 

ところで、本回のタイトルおよび上記文章で「ゾーン内でタック」と記載しているのは、便宜的な言い回しだということを記載しておきます。今回の規則改正で規則18.3のタイトルが「ゾーンの中でタックする場合」から「ゾーン内で風位を越える場合」になりました。これはタックの後半(風位を越えてからクロースホールドになるまで)でゾーンに入った場合を想定していて、そのような場合はこの規則18.3「風位を越える場合」が適用されますので、例えばポートからスターボードにタックしているところでゾーンに入ってフェッチングした場合は、18.3の適用ということになります。

 

18.4 ジャイブする場合

内側にオーバーラップした航路権艇が、プロパー・コースを帆走するために、マークにおいてジャイブしなければならない場合、その艇は、ジャイブするまではそのコースを帆走するために必要とする以上にマークから離れて帆走してはならない。規則18.4はゲート・マークでは適用されない。

 

風下にあるマーク回航をイメージしましょう。

 

ゾーン到達した時に、自艇がスターボードで内側にオーバーラップしている(アンクロック回航であれば風下艇でもある)場合、自艇は権利艇でありマークルームをもらえる艇ですが、最終的にはジャイブしてポートでマークを回航する、つまりそれが最後はプロパー・コースになるので、ジャイブするまでの間に無駄に権利を主張してマークから遠くまで外側艇を連れて行ってはだめよ。ということです。

 

そして、ゲート・マークで適用されないのはなぜでしょうか?

ゲート・マークでのゲートの長さは、レース・マネジメント・マニュアルで710艇身(風速や艇のパフォーマンスによる)とされています。つまり、両方のゾーン+αがゲートの間隔なのですが、どちらのマークを回るかは、回る時まで決まりません。スターボード側のマークのゾーンに入ってから、ポート側のマークを回航することもあり得ます。そのため、どのマークに向かうためのジャイブかは、直前までわからないわけなので、プロパー・コースが定義できないんですね。

「おいおい、連れて行くなよー」と言っても、権利艇は逆のサイドのマークを回りたいこともあるのです。

なので、ゲートマークでは18.4が適用されません。

 

というところで、規則18のお話はここまでです。

 

ところで、規則18.4の余談ですが、いつもアンクロックでレースをしていると、ゲートマークをスターボードで回航するのはなんだかいつもと違ってうまく回航出来ないなんてことあります。(特に私のような素人は・・・!)

アンクロックしか回ったことがなくて、初めてゲートマーク設置のレースに出る時は、下マークのクロック回航練習をしておくことをオススメします!

それから、特に風がイーブンの場合、ゲートマークはぐちゃぐちゃになることがありますので、周囲との権利関係をよく確認しながら、かつ相手がどちらのマークを回ろうとしているのか?自分はどちらを回りたいか?そしてそれは直前で変更になる可能性があるんだ!と思いながらアプローチします。

風が吹いていて狭いゲートだったりすると、阿鼻叫喚の地獄絵図になることもありますが、周りをよく見て果敢にいきましょう!(自分への言い聞かせでもあります。)

 

マークルームを与える/もらうこと

やっと本題のマークルームを与える/もらうところです。余計なことは既に取り払っていますので、本題はここだけです。

 

18.2 マークルームを与えること

(a) 艇と艇がオーバーラップしている場合、外側艇は内側艇にマークルームを与えなければならない。ただし、規則18.2(b)が適用される場合を除く。

(b) 艇と艇がそのうちの最初の艇がゾーンに到達したときにオーバーラップしている場合には、その時点での外側艇はその時点での内側艇に、それ以降、マークルームを与えなければならない。艇がゾーンに到達したときにクリア・アヘッドである場合には、その時点でのクリア・アスター艇はその時点でのクリア・アヘッド艇に、それ以降、マークルームを与えなければならない。

(c) 艇が規則18.2(b)によりマークルームを与えなければならない場合、

 (1) その艇は、その後オーバーラップが解けたり、新しいオーバーラップが始まったとしてもマークルームを与え続けなけれればならない。

 (2) その艇がマークルームを得る資格がある艇の内側にオーバーラップした場合には、オーバーラップが続いている間、相手艇がプロパー・コースを帆走するルームもまた与えなければならない。

 

簡単ですね!さて、まとめます。

マークルームがあるのは、風上マークでは同一タックの場合のみで、その他は回るべき全てのマークとフィニッシュ・マーク。(スタート・マークは含まない)

 

ゾーン到達時にオーバーラップがあり、自分が外側艇だったら、

・内側艇にマークルームを与える。もちろん、オーバーラップ艇が複数の場合もある。

・その艇間で、その後のゾーン内でオーバーラップが解けたり、またラップしたりしても、ゾーンに到達した時の関係が続く。

・状況が変わって自分が内側艇になってしまっても、ゾーンに到達した時に内側艇だった艇の邪魔をしてはだめ。

・風上マークで内側艇がマークに入るためにタックしたいと言ってきてもそのタックのルームは無いよとお伝えしてOK。但し、シュートして入ってくる可能性はあるので、マークルームは作っておく。(フィニッシュ・ラインが風上の時、アウター側フィニッシュの時なんかでもよくあるケース。)

 

ゾーン到達時にオーバーラップがあり、自分が内側艇だったら、

・真っすぐマークに向かう道と、マークにぶつからずに回るルームをもらえる。もちろん、自分にも内側艇がいたら、自分は内側艇だけれども外側艇でもある。

・ゾーンに入ってから、元々の外側艇が内側に入ってしまったら、自分のプロパー・コースを主張して進む。

・風上マークでスターボードでアプローチしていて、タックしないと入れなくなってしまっても、タックのルームはもらえない・・・。頑張ってシュートして入るか、入れなければマークルームは諦める。(そうなる前に、なんとかしよう。)

・必要なマークルームがもらえなかった場合、もらえなかった立証を出来るような行動をする。

 

いずれの場合も、ゾーン到達時にその前の状況からの継続でオーバーラップしてた?切れた?とわからない場合は、してなかった、切れてなかった、という判断をします。

 

いかがでしょうか。過去5回でマーク周辺の大事なところを整理しました。

自分で書いていて、私はかなりスッキリしました!!

RRS2021-2024(日本語訳付版)リリース

RRS2021-2024の日本語訳付版が発刊されました!

更新版ルール適用開始まであと1か月位ありますし、

JSAFからはスマホアプリ版も販売しているとのことなので、

今まであまりルールブックを読んでいなかった方を含め、手元に準備しておきましょう!!

 

今回版から、なんだかオシャレな表紙になりましたネ。

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RRS2021-2024(日本語訳付版)

 

マークルームを与えない場合

さて規則18が少し複雑なので分かりやすく説明するために、この規則が適用されない場合等、つまりマークルームを与えなくて良い場合についてを、先に挙げておいてしまいます。しかし、その与えなくて良い場合も複雑なので、先に割り切ってまとめてしまいます。

要は、(私の理解では、私が想像する日本国内のレースで起こりえるほとんどの場合において)ゾーンでオーバーラップしているのにマークルームを与えなくてよい場合は、風上にあるマークでの反対タックの艇の間です!

 

風上マークでの反対タックの艇間だけと読み解きましたが、その複雑なことを書いてあるルールブック、以下はこんなことが書いてあるのだということと、何かあったら検討する箇所として、留めておいてください。

 

18.1 規則18が適用される場合

(前略)ただし、次の場合には適用されない。

(a) 風上に向かうビートで反対タックの艇間。

(b) 両艇ではなくどちらか一方の艇のマークにおけるプロパー・コースがタックすることである場合の、反対タックの艇間。

(c) マークに向かう艇と、マークから離れる艇間。

(d) マークが連続した障害物の場合には、規則19が適用される。

規則18は、マークルームがすでに与えられた艇の間では適用されない。

 

(a)例えばアンクロックのラウンディングでゾーンに到達した内側艇がポート艇だった場合、スターボード艇はポート艇にマークルームを与える必要はない。

「風上に向かうビート」についてですが、プロパー・コースがクロースホールドまたはそれより風上の場合、風上に向かうビートにいる。といいます。(ケース・ブック ケース132)これは、風上へ向かうレグにいる場合でも必ずしも風上に向かうビートにいるとは限らない。レイラインをオーバーセールていたらクロースホールドより落として帆走する。等ため、明記されています。

(b)は「風上に向かうビート」ではなくても、タックしたらマークをフェッチングする位置になる艇とそうではない艇が反対タックの場合(だと思います)。オーバーセールで角度を落としてマークに向かっているスターボード艇とポート艇の間等。

(a)+(b)で風上マークの反対タック艇間のことを指していると思います。

(c)は大丈夫ですね。

(d)は障害物の場合で、規則19は障害物の避け方の規則ですので後の回で。

それから今回のルール改正で付け加えられたのが最後の一文ですが、追加された理由は、ルールの意図するものを整えるためのものなので、基本的にはマークルームは一度与えたら、その艇間(双方)においてそれ以上はなく、終わりとなるということを意味しています。(再度与えたり、与え返したりはない。)

 

それから、状況としてはルール適用範囲でも、マークルームを与えなくてよい場合はこちら。

 

18.2 マークルームを与えること

(d) マークルームを得る資格がある艇が、風位を超えたか、もしくはゾーンから離れた場合には、規則18.2(b)および(c)の適用は終了する。

(f) 艇がクリア・アスターから、または他艇の風上でタックすることによって内側にオーバーラップし、そのオーバーラップが始まったときからでは、外側艇がマークルームを与えることができない場合には、マークルームを与える必要はない。

 

(d)は(今回のルール改正で修正が入った箇所ですが)、「マークルームを与えられる艇が風位を超える」は、上マークを想像するとわかりますが、風上航でマークルームは同一タック艇間しかないので、タックする=反対タックになるのでマークルーム適用はなくなります。それから「ゾーンから離れた場合」は2パターンあると思いますが、マークを回ってから離れる場合と、マークを回る時にそのままゾーンから出てしまう場合ですが、いずれの場合もゾーンから一度出たら、一からやり直しとなるということです。

(f)は、クロックラウンディングのレースで艇速が異なる艇間を想定しています。例えばスターボードでマーク際でタックしてラウンディングしようとした艇の前を通過したポート艇が風上側でタックしてオーバーラップした場合、同タックではあるものの、もはやマークルームを与える余地がないなら、仕方ない。という解釈のようです。

 

なんだか少し歯切れが悪い回ですが、微風で風よりも強い潮の中でのレースを想定したり、明確でない定義や規則の穴をつくケースが起きていて、過去に高頻度で整合性を整えるための変更が加えられているのがこの規則18。勉強して、また更新していきたいと思います。

 

過去3回で「マーク」「マークルーム」「ゾーン」と、今回「マークルームを与えなくてよい場合」を整理しました。その上で「マークルームを与えること」についての規則を読むとシンプルにわかりやすくなると思い、あえて本題を後ろ回しにしました。ということで、次回、ついに本題です。